研究課題/領域番号 |
23390354
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 英寿 自治医科大学, 医学部, 教授 (50150272)
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研究分担者 |
檀 一平太 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20399380)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 失語症 / 脳機能 / 脳機能イメージング / テーラーメイド医療 / 光トポグラフィー / 言語処理 |
研究概要 |
本研究の目的は、脳幾能イメージング去を用いて失語症患者に残存する言語目断幾能を検索し、その結果に基づいて言語回復のリハビリテーションメニューを設計支援する、新たなテーラーメード脳機能画像診断法を創出することである。 近年、失語症患者の言語機能の回復は、言語処理に関係しない部位の新たな機能獲得ではなく、残存する言語脳機能の活用によるという説が有力になりつつある。そこで、本研究では、MEG、fMRI、光トポグラフィを組み合わせたマルチモーダルな脳機能イメージング法によって言語課題遂行時の失語症患者の脳活動のパターンから残存言語脳機能を最大限に活用するための、患者の状態に即した最適なリハビリテーションメニューの設計支援を行なう。これらを統合して、失語症の回復を支援するための、テーラーメード脳機能画像診断システムの基礎を構築する。 初年度の探索的研究において見いだされた失語症患者の残存脳機能探索に有望と見られる言語課題について、光トポグラフィを用い、語流暢課題を中心に詳細な検討を行なった。語流暢課題としては語頭音課題とカテゴリー課題が挙げられる。このうち、カテゴリー課題については、左右の言語関連領野(下前頭回、中心前回、中心後回、上中側頭回)に局在した左優位の脳活動が観察された。一方、語頭音課題では左右の言語関連領野に加え、左周辺領野(縁上回、中前頭回)及び右周辺領野(縁上回、角回、中前頭回)の活動が見られた。印欧語では右縁上回、角回の賦活は報告されていない。日本語語頭音課題は他言語の語頭音課題と課題特性が異なるため、日本語に特徴的な脳賦活パターンが存在することが見いだされた。すなわち、音韻検索、音韻生成要素が強く、該当語数が少ないため課題難易度が高いという特徴があり、左右言語周辺領野(縁上回、角回、中前頭回)の賦活により、音韻的な機能補助が行われている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画と比較し、マルチモーダルな言語関連脳機能計測という点では、MEGによる解析に技術的な課題があるが、光トポグラフィについては、当初の予定より重厚な解析が実現している。特に、日本語に特有の脳活動パターンが見いだされたことにより、言語課題におけるローカライゼーションの必要性が示された点は重要である。すなわち、印欧語の課題における脳活動パターンは参考としつつも、日本語の課題における脳活動パターンを詳細に検討する必要であるという重要な知見が得られた。また、研究進展に伴い、論文発表も順調に進行している。全体的には、概ね順調な進行状況と考えられる
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、現在進行中の、亜急性期の重症失語症患者に対する脳機能解析をさらに推進させる。計30名程度の規模の被験者について、解析を終了させ、基本活動パターンの抽出を行ない、その結果に基づいて、課題の最適化をおこなう。呼称課題による脳機能解析を実施する。亜急性期の失語症患者の脳機能イメージング研究は技術的困難を伴うため、これまで、数例程度の報告しかなされていないが、本研究で行う計測は、最大規模のものとなる。統計的にもグループ解析に耐えうる規模の計測例ではあるが、現在までの結果によれば、ノイズの影響が極めて大きく、この除去をした上で、意味のある解析結果を得られるよう、鋭意、解析を進めている。 また、これまでに検討を行なった言語課題について、研究進展が順調であった光トポグラフィを中心に、より効率的な課題設定を健常者において実施する。脳の時間応答から有用な情報を抽出するため、一般線形モデル(GLM)による解析系を探索する。具体的には、従来用いられてきた単一の脳血流動態応答関数(HRF)による解析ではなく、課題の時間特性に合わせて、探索的にHRFを変化させる新手法の適用を試みつつあるが、実行には莫大な計算量を要するため、アルゴリズムの最適化を目指す。これによって、光トポグラフィの高時間分解能を活用した言語機能検査法の創出を目指す。
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