研究課題
研究初年度である今年度は、一般地域住民集団において車両搭載型MRI撮像装置用いて実施した全脊椎MRI画像と、検診時に収集した400項目以上の詳細な臨床情報のデータベース化作業を進めるとともに、蓄積されたデータベース情報の中から頚部脊柱管狭窄と腰部脊柱管狭窄のデータを用いて検討を行い、一般住民における有病率の解明を行った。MRI検診への参加を表明した1,011名(男性335名、女性676名、平均年齢66.3歳)のうち、ペースメーカー装着その他不適応者や体動による画像読影困難者を除外して、MRI画像を解析できた977名の頚椎および985名の腰椎画像所見と臨床情報を解析した結果、対象集団の頚髄圧迫の頻度は全体で24.4%であり、男女別では男性29.4%、女性22.4%で有意に男性に多く、男女ともに50歳代以降に経年的に頚髄圧迫の頻度が高かった。これを本邦の年齢別人口構成にあてはめて計算すると、日本における頚髄圧迫者数(40歳以上)は1470万人(男性780万人、女性690万人)にのぼることが明らかとなった。また、対象集団における腰部脊柱管狭窄症の有病率は9.3%(男性10.1%、女性8.9%)で、男女ともに50歳代以降に有病率が高値を示す傾向となり、同様に本邦の年齢別人口構成にあてはめて計算すると、日本における推定有病者数(40歳以上)は580万人(男性300万人、女性280万人)にのぼることが明らかとなった。一方、MRI画像評価システムでは自動計測のためのアルゴリズムを開発中であり、また脊椎疾患の疾患感受性遺伝子探索研究ではゲノムワイド関連解析と高密度ジェノタイピング法を用いて候補領域の絞り込み作業を進めている。本研究初年度に、日本人一般住民集団における中高年者の頚部脊柱管狭窄(頚髄圧迫)および腰部脊柱管狭窄症の有病率と推定有病者数を解明できた意義は大きいと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
全脊椎MRI画像データと臨床情報のデータベース化、そのデータを用いた脊椎疾患の疫学指標の解明、さらにMRI画像評価システムの開発と脊椎疾患感受性遺伝子探索研究が進行中であり、おおむね計画に沿って進行中である。特に研究初年度である今年度は、従来レントゲン検診では成し得なかった頚部脊柱管狭窄(頚髄圧迫)と、腰部脊柱管狭窄症の一般住民集団における有病率を解明することができ、それらの日本人推定有病者数を解明することができた。これらは、今後の脊椎疾患の予防対策を進める上で基盤となる重要な疫学指標であり意義は大きい。
本研究課題の計画変更はなく、次年度以降、当初の計画に従い、研究を進めていく。
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