研究課題/領域番号 |
23390362
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村瀬 剛 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50335361)
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研究分担者 |
坂井 孝司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00444539)
菅本 一臣 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40294061)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60191558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 整形外科 / 四肢変形 / シミュレーション / 手術デバイス / 矯正 |
研究概要 |
1.プログラム開発:CTデータから作成した骨モデルの内部構造を消去し、皮質骨表面のみを残した骨表面モデルを作成して、シミュレーションに用いる手法を確立。変形情報から3次元変形軸を求めてopening wedge osteotomy, closing wedge osteotomy, rotational osteotomyのいずれかの手術シミュレーションが出来ることを示した。また、骨欠損部に対する補填形状の計算手法を開発した。本手法は移植骨形状の術前計画に有用である。また、実際の前腕骨折変形治癒・内反肘変形の臨床データを用い試験的シミュレーショを繰り返し、実用性の検証と機能不具合の調整を行った。 2.カスタムメイド手術ガイド:前年度確立した設計・製造条件をナカシマメディカルに技術移転し、米国FDA認可基準の医療用樹脂であるポリアミド12を用いた積層造形法で製造委託することとした。本樹脂を用いたガイドは正確性と堅牢性を兼ね備えており、術中の破損による異物残留のリスクを大幅に低減できる。これにより臨床的安全性の担保と薬事承認を含めた実用化の加速が期待できる。 3.屍体標本を用いた模擬手術実験:上肢新鮮屍体を用いた模擬手術実験を行い、2.0mm、1.5以下の3次元精度を達成し、従来のマニュアル操作による手術の精度を大きく上回ることを確認した。 4.臨床応用:倫理員会承認の下、前腕骨折変形治癒20例に対して矯正骨切術を施行した。同障害は3次元的に正確な解剖学的矯正が非常に難しいことでしられ、一般的に骨折受傷後1年以上経過例の手術成績は不良とされる。我々の開発したシミュレーションとガイドを用いることで受傷後8年までの経過例では良好な前腕可動域の獲得が可能であった。また、基礎となる臨床データ収集のため前腕骨変形パターンの調査、前腕の術前動態解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的と照らし合わせて:「1.模擬手術実験と精度調査による高精度化」に関しては、前年度に繰越課題としてミュレーションのさらなる高精度化(骨モデルの最適化:不整トリゴン・holeの除去、サーフェスの自動生成)を行うことで効率化を図り、屍体標本を用いた模擬手術実験、臨床応用へとつなげた。 「2.術前後の動態機能解析方法の開発」に関しては、複数ポジションでのCT撮影から得られた骨モデルを3次元空間位置合わせすることで動態を再現して解析を行った。臨床症例データとしては前腕の回旋動態解析を行って、病態の解明につなげた。 「5. 臨床応用」に関しては当初目標としていた症例数に達し、良好な成績が確認されたため、次年度以降は他の変形にも応用する予定とした。
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今後の研究の推進方策 |
基礎技術としては当初の目標通り1mm・1°以内の矯正程度が得られるように屍体実験とその結果のフィードバックによるさらなる高精度化を目指す。そのために、デバイスの設置位置を確認するための手法を改良するとともに、今後は骨接合インプラント自身もカスタマイズすること、とその試験物を用いて屍体標本を用いた実証試験を計画している。カスタムメイドガイドとカスタムメイド骨接合プレートを矯正シミュレーションに基づいて一体的に設計することで手術の正確性と信頼性が大幅に向上することを狙っている。 また、当初計画を一部先取りして研究の進捗を認めるため、日常的に良く遭遇する内反肘変形にも臨床応用を広げてその有用性を検証する。 動態解析に関しては、術後の動態解析を行うことで、矯正による動態の改善評価法の確立を目指す。
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