研究概要 |
大型骨欠損の再生医療に於いて一つの大きな課題はいかに効率的に必要な数、性質の細胞を得るか、ということである。間葉系幹細胞をはじめ、幹細胞と呼ばれる細胞は各組織に非常に低率にしか存在せず、臨床応用するにはこの幹細胞を効率的に必要とする細胞へ分化させる方法を明らかにすることが必須である。我々はiPS細胞を用い幹細胞を効率的に骨芽細胞へ誘導するに必要な因子を検討している。具体的には無血清培地(KO-DMEM)+1% ITS-A supplement+2% B-27supplementを基礎培地とし、これにRAおよび各種サイトカインを添加することで骨芽細胞系細胞への分化誘導行っている。添加するサイトカインは、ATRA(100nM),Wnt3A(25ng/ml),Activin-A(25~100ng/ml),bFGF(20ng/ml),Follistatin(100ng/ml),BMP-2(200~500ng/ml)で、各々の添加量、時期を変化させて分化誘導を行い、骨芽細胞前段階の中胚葉系細胞の効率的誘導条件の決定に至った。 悪性骨腫瘍患者で幹細胞を用いた骨再生医療を検討する際には化学療法が間葉系幹細胞の数と機能にいかに影響を及ぼすかを明らかにする必要がある。我々はまずラットモデルを用いて高用量の化学療法が骨髄間葉系幹細胞に及ぼす影響をコロニー形成能で検討した。急性期で大腿骨1本から採取した細胞群のコロニー形成能は化学療法群では非投与群の47.3%であったが、比重遠心分離法の単核球層の細胞群では単位細胞数あたりコロニー形成能は非投与群の120%であった。このことは化学療法急性期の骨髄においても間葉系幹細胞が十分に存在し化学療法による細胞障害を受けにくい可能性を示唆している。 各種幹細胞の安全性評価のために、従来のCFU-Fからとれる間葉系細胞集団の造腫瘍性をヌードマウスを用いた系で検討し、造腫瘍性が無いことを確認した。また、超免疫不全動物であるNOGマウスを用いた造腫瘍性試験を確立した。
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