研究課題/領域番号 |
23390371
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター) |
研究代表者 |
福井 尚志 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 政策医療企画部, 研究員 (10251258)
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研究分担者 |
鈴木 孝昌 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子細胞医薬部, 研究室長 (30226526)
古川 宏 独立行政法人国立病院機構(相模原病院臨床研究センター), 遺伝子診断・治療研究室, 室長 (00372293)
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キーワード | 変形性関節症 / 滑膜 / 軟骨 / VEGF-A / FGF-2 |
研究概要 |
研究初年度である平成23年度にはまず予備実験で得られた結果を検証することから研究を遂行した。このためにOA症例と剖検例の膝関節から追加して関節軟骨を採取し、所定のプロトコールに従い荷重を反復して加えて浸出してきたタンパクの濃度計測、これを実験に用いた関節軟骨の質重量で補正したのち剖検例からの対照軟骨とOA関節からの変性軟骨の間で比較したところ、確かにVEGF-A、FGF-2およびファイブロネクチンの濃度が変性軟骨で高く、予備実験の結果が確認された。つぎに荷重によって得られたこれらの浸出液を用いて上記の3つの因子以外にOAにおける滑膜病変に関与する因子がないかをまずLuminexを用いて検討したが、今のところ3因子以外にTGF-bの遊離量が変性軟骨にいて低下している以外、有望な因子が見つかっていない。 次にOA軟骨からVEGF-A、FGF-2、ファイブロネクチンの遊離量が増加する機序を明らかにするためにOA軟骨と対照軟骨の間で遺伝子発現を比較した。この結果ファイブロネクチンの発現はOA軟骨で亢進していることが明らかになったもののVEGF-AとFGF-2についてはOA軟骨における発現亢進が明らかではなく、発現の亢進あるいはタンパク産生の増加が遊離量増加の原因ではない可能性が示された。 これらの実験と並行して変性軟骨からの遊離が確認されたVEGF-AとFGF-2について動物実験によって滑膜病変に及ぼす影響を検討した。実験にはマウスを用い、リコンビナントタンパクのマウスVEGF-AおよびマウスFGF-2を膝関節内に1週間1回の間隔で合計6回反復して投与、最終投与から1週後に膝関節を採取して関節内に誘導された変化を組織学的に評価するという実験を行った。この実験の結果、VEGF-AおよびFGF-2がヒトOAで見られるのに似た滑膜の変化を引き起こすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備検討で見出されたOA軟骨から荷重によって遊離する因子については、本年度の研究によってその量が軟骨変性の程度に応じて増加することが確認された。またこれらの因子がマウス膝関節内に投与された場合にヒトOA滑膜で見られるものに似た変化が生じることが確認された。これらのことから本研究は内容の若干の変更はあるものの、おおむね当初の計画通りに遂行されていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
OAによって軟骨からの遊離量が増える因子のうちVEGF-AとFGF-2については遊離量が増加する機序は現在のところ不明であり、本研究においてはこの機序の解明が新たな課題として浮かび上がった。また荷重によって遊離する他の因子検索は当初予定していたプロテオームの手法ではなくLuminexを用いた方法で行っているが、今後当初予定したプロテオーム的解析の導入も検討する。動物実験ではリコンビナントのVEGF-AとFGF-2の投与によってヒト滑膜がOAで生じるのに似た変化が生じることが確認されたが、その程度は比較的弱く、またこれらの因子の投与に伴う関節軟骨の変性は観察されなかった。今後投与の方法、期間を検討しつつ滑膜、軟骨に起こる変化をさらに検討する必要があり、これも本研究で今後検討ずべき課題である。
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