研究課題
変形性関節症では滑膜に明らかな病変が生じ、また関節液中には病変が生じた滑膜から遊離したタンパク分解酵素が複数、相当な濃度で存在し、OAにおける軟骨基質の変性・消失に関与する。本研究ではヒトOA患者から採取した滑膜組織の解析から滑膜における血管新生が滑膜組織の変性を誘導し、滑膜中の線維芽細胞の活性化を引き起こして複数のMMPの産生を誘導していることを見出した。OA滑膜における血管新生の重要性はヒトの膝関節のOA症例に対してVEGF-Aに対する中和抗体であるbevacizmabを投与するという臨床研究によって実証された。OA関節で滑膜に血管新生が誘導される原因を調べる過程で、われわれは変性軟骨においてVEGF-Aの含有量が増加することを見出し、これがOA滑膜における血管新生の機序の一つであると考えた。非常に興味深いことにOA軟骨におけるVEGF-Aの産生亢進は遺伝子発現レベルの変化を伴っていなかった。この現象を解明するための研究を展開し、正常な関節軟骨細胞ではVEGF-Aの産生が遺伝子レベルでは相当なレベルで維持されているが、VEGF-Aの産生は翻訳レベルでGAIT complexと呼ばれるタンパク複合体の働きで抑制されていること、しかしOA軟骨では細胞外マトリクスの変性・喪失によりGAIT complexの機能が低下し、これによってVEGF-Aの産生が遺伝子発現レベルの明らかな変化なしに増加することを突き止めた。本研究によって得られたこれらの知見はOAの病態を解明し、新規の治療法を開発するうえで極めて重要な手掛かりとなると考えられる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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