研究課題/領域番号 |
23390373
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小幡 英章 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20302482)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ノルアドレナリン / セロトニン / 脊髄 / 神経障害性疼痛 / ラット |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に従って目的3(オピオイドの鎮痛作用に対する脊髄5-HTの役割を検討する)を行った。 臨床においてはオピオイドが神経障害性疼痛に対して無効な場合がある。この現象は基礎研究でも報告されており、様々な説が唱えられている。神経障害性疼痛時に5-HTは、脊髄後角の5-HT3受容体を介して痛みの増強に働くと考えられている(Suzuki et al., Trends Pharmacol Sci. 2004;25:613-7)。そこで今回は、脊髄後角で増加した5-HTが、モルヒネの神経障害性疼痛に対する鎮痛作用の減弱に関与している可能性を検討し、以下の結果を得た。 (1)正常ラットと神経障害性疼痛のモデル(Spinal nerve ligation; SNL)にモルヒネを投与して、Paw-pressure testで下肢に機械的侵害刺激を与えて逃避閾値を観察すると、正常ラットに対しては強い鎮痛作用が認められたが、SNLの痛覚過敏に対しては効果がほとんどなかった。(2)モルヒネの正常ラットへの鎮痛作用は、脊髄に5-HT3受容体拮抗薬を投与すると減弱したが、SNLの痛覚過敏に対しては同様の処置により効果が強まった。(3)モルヒネを全身投与して脊髄のモノアミンの変化をマイクロダイアリシスで観察すると5-HTだけ増加してノルアドレナリンは増加しなかった。 つまりSNLの痛覚過敏に対してモルヒネの効果が減弱することには、脊髄で増加した5-HTが関係していることが強く示唆されたため、5-HT神経を5,7-dihydroxytryptamine creatinine sulfateの髄腔内投与(100 μg)によって破壊した後に行動実験を行った。その結果、モルヒネの正常ラットへの鎮痛作用は減弱したが、SNLの痛覚過敏に対しては効果が強まった。 以上の結果からモルヒネのようなオピオイドを全身投与した時の鎮痛作用は、神経障害性疼痛に対しては減弱するが、この現象には脊髄で増加した5-HTが関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想と若干異なるデータが得られたため、そのデータをサポートするための追加実験が必要となったが、研究計画に示した実験は、ほぼ予定通り終了し、研究期間中に論文として発表できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
モルヒネの全身投与が脊髄で5-HTを放出するのは、RVMにある5-HTニューロンが活性化されるためであると思われる。よってそのことを直接的に示す必要があるため、免疫2重染色を行っている。モルヒネを腹腔内(10 mg/kg)投与し、30分もしくは2時間後に還流固定してRVMの切片を作成する。pCREBまたはc-fos(細胞活性化のマーカー)と、tryptophan hydroxylase(5-HT合成酵素)との免疫2重染色を行い、5-HTニューロンがモルヒネ投与によって活性化しているか検討する。
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