研究概要 |
骨がん疼痛での下行性疼痛調節系の役割りを解明するために、セロトニン性下行性疼痛調節系も起始部である延髄吻側腹内側部(Rostroventromedial medulla: RVM)とノルアドレナリン性下行性疼痛調節系も起始部である青班核(locus coeruleus: LC)の機能変化について電気生理学的および神経化学的手法を用いて調べた。マウス骨がん疼痛モデルはMantyhらの方法(Schwei, J Neurosci 1999)に従い,osteosacoma cellをC3H/HeJマウスの左大腿骨に移植し作成した.骨髄内での腫瘍の増殖は小動物用MRIで確認するとともに,組織化学的に(HE染色)確認した.モデルの完成は,自発疼痛関連行動,動作時疼痛関連行動評価で確認した.自発疼痛関連行動は足舐め行動,足振り行動に費やす時間で評価した.動作時疼痛関連行動は,自発的歩行時の患側下肢の使用状況や自発立位時の患側下肢への加重の程度を評価した。行動評価でモデル完成確認後に、RVMとLCを解析した。RVMではセロトニン陽性神経、GABA陽性神経、およびミューオピオイド受容体の発現について検討した。その結果、骨がん疼痛状態にあっても、RVMでの変化は認められなかった。LCの機能変化はin vivo細胞外記録を用いて検討した。その結果、骨がん疼痛状態にあってもLCの機能変化は認められなかった。以上により、骨がん疼痛状態では、下行性疼痛調節系の機能変化は少ないと考えられた。
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