研究課題
前立腺癌における脂質に関連した分子および薬剤の関与を検討するため、平成25年度にはメトフォルミンが前立腺癌に及ぼす効果、スタチンの効果を網羅的な遺伝子発現などの点から研究を行い下記の結果を得た。メトフォルミンは前立腺癌細胞PC-3に対して、増殖、浸潤能、遊走能いずれも有意に抑制した。さらに、MAPK-Aktの有意な活性化(リン酸化)も確認した。これらの上流シグナルを検討するために、IGF-1に着目し、受容体であるIGF-1受容体の変化を検討し、遺伝子発現、タンパクレベルいずれも、メトフォルミンによる発現抑制を確認した。ヌードマウス皮下移植モデルによるin vivoの検討ではメトフォルミン250mg/dayの腹腔内投与で4週後の腫瘍増殖が抑制され、メトフォルミンによる腫瘍増殖抑制がIGF-1/IGF-1R系を介していることを確認した。PC-3細胞はアンドロゲン受容体陰性であり、IGF-1系とアンドロゲン系のクロストークを除外してメトフォルミンーIGF-1/1R系の評価を行ったが、アンドロゲン依存性であるLNCAP細胞でもより低用量のメトフォルミンによる効果を確認した。スタチンによる遺伝子発現の変化をcDNAマイクロアレーによる網羅的検討からスタチンで高発現する遺伝子してANXA10を同定した。細胞増殖抑制と関連していると報告されているが、ヒト前立腺生検標本での遺伝子発現は非癌サンプルで発現が癌サンプルと比較して有意に高かった。スタチン投与によりmRNAおよびタンパクの高発現が確認され、siRNAによる発現抑制で増殖効果を、ANXA10の発現ベクターによる高発現で増殖抑制効果を確認した。抑制効果は浸潤能、遊走能の抑制を伴った。更に、ANXA10の下流分子であるS100A4の発現に作用を及ぼしている可能性が判明し、継続している。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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