研究課題/領域番号 |
23390379
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
並木 幹夫 金沢大学, 医学系, 教授 (70155985)
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研究分担者 |
角野 佳史 金沢大学, 附属病院, 助教 (10397218)
溝上 敦 金沢大学, 附属病院, 講師 (50248580)
三輪 聰太郎 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (80507070)
東 達也 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90272963)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 再燃前立腺癌 / アンドロゲン / 微小環境 / 間質細胞 / エストロゲン |
研究概要 |
1.正常前立腺組織と前立腺癌組織から得られたRNAからcDNA microarrayを行うことにより、癌組織にて発現が減少し、活性酸素の代謝に関わる遺伝子Superoxide Dismutase 3 (SOD3) を同定した。このSOD3の発現を前立腺癌培養細胞で調べると、アンドロゲン依存性細胞LNCaP、非依存性細胞PC-3、DU145の3種類で低下していた。SOD3の前立腺癌組織での機能を明らかにするために、これらの細胞株に強制発現させ、安定発現株の樹立を試みている途中である。 2.前立腺癌周囲の微小環境が癌細胞の動きにどのような影響を与えているかを明らかにするために、間質細胞から比較的多く分泌されている細胞外マトリックスのSPARC (Osteonectin)に注目し、研究を行った。SPARCは正常間質細胞より癌細胞由来間質細胞で発現が減弱していた。SPARCはAKTのリン酸化を阻害することにより前立腺癌細胞の増殖や癌細胞の遊走能を抑制していた。さらにインテグリンβ1を受容体として癌細胞に作用していることが判明した。 3.前立腺癌細胞および前立腺癌由来間質細胞内での副腎性アンドロゲンの代謝を明らかにする研究において、テストステロンから代謝されるエストロゲンに注目した。間質細胞でのエストロゲン産生能があることを、間質細乳癌細胞株MCF-7との共培養でエストロゲン活性を示すことを明らかにした。この間質細胞をアンドロゲン非依存性PC-3と共培養し、テストステロンを添加すると、PC-3の増殖が抑制された。この作用はテストステロンの作用ではなく、代謝されたエストロゲンによる作用の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cDNA microarrayにて前立腺癌組織で発現の低下している遺伝子を同定し、その機能解析ができつつある。また前立腺癌組織内での内因性アンドロゲン生合成に関与する酵素を阻害する可能性のある物質として植物フラボノイドに注目し、その効果を確認しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
1.SOD3の機能の解析:SOD3の発現状況を前立腺癌組織を用いて免疫組織染色を行い、正常前立腺との比較、悪性度との相関、予後との相関を明らかにする。さらに、SOD3強制発現前立腺癌細胞株を用いて、その酵素活性の有無を調べるとともに増殖、遊走能、浸潤、血管新生への影響、並びにその作用機序を明らかにする。 2.SPARCの解析:SPARCの発現の状況を骨由来間質細胞で確認する。骨由来間質細胞と前立腺癌由来間質細胞が前立腺癌細胞に与える影響の違いを明らかにしていく。 3.前立腺癌再燃に及ぼす副腎性アンドロゲンの影響:前立腺癌由来間質細胞で合成されるエストロゲンの癌細胞に対する影響をさらに明らかにするために、癌細胞と間質細胞を共培養させて増殖、浸潤、遊走能の変化を観察する。また、アンドロゲン生合成に関与する酵素を阻害する化学物質を植物フラボノイドの中から同定して、その作用機序を明らかにする。
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