研究課題/領域番号 |
23390380
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
横山 修 福井大学, 医学部, 教授 (90242552)
|
研究分担者 |
伊藤 秀明 福井大学, 医学部, 助教 (00345620)
多賀 峰克 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (00529349)
黒川 哲之 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (70529346)
渡邉 望 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (80572429)
秋野 裕信 福井大学, 医学部, 准教授 (90159335)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | メタボリック症候群 / 下部尿路症状 / レニンアンギオテンシン / 高血圧 / 食塩過剰 / 肥満 / プロスタグランジン / 膀胱機能 |
研究概要 |
メタボリック症候群にみられる変化は全身臓器に生じており、膀胱も例外ではない。メタボリック症候群にみられる臓器障害はその局所のレニンアンギオテンシン系(RAS)が関与しているとの報告があり、心肥大や動脈硬化もその本体は局所RASと言われている。我々は、MetS病態モデルとしてOLETFラットを用い、正常食でも6ヶ月の時点で体重増加、高血圧、インスリン抵抗性、脂質異常がみられ、また膀胱内圧測定で排尿筋過活動の所見があることを報告した。酸化ストレスマーカーである8-OHdG濃度も膀胱では高いこと、膀胱壁伸展に伴う上皮由来ATP、Prostaglandin E2、NGFが多く放出され、これが膀胱知覚神経C線維を刺激して排尿過活動を引き起こすものと推察された。また膀胱壁ではムスカリン受容体、プリン受容体、iNOS、プロスタノイド受容体の発現も増えており、これは新規治療に繋がる結果と思われた。ヒト高血圧の病態モデルとして、食塩感受性ラット・食塩抵抗性ラットを用い、高食塩食(8%)、一定水分量(40ml/day)にて高血圧を認めるラットで、排尿回数の増加を確認した。食塩抵抗性ラットでは高食塩食(8%)でも血圧上昇や、排尿回数増加もなかった。 MetSと下部尿路機能障害に共通の発症リスクが存在するならば、MetSの予防・治療はLUTSの改善につながるはずである。アンギオテンシン受容体サブタイプのうちAT1受容体に拮抗するARBは高血圧症の治療薬であるが、ARB投与のLUTS患者と他の降圧薬投与の患者では、IPSSのスコア-に有意な差があることを報告した(Neurourol Urodyn, 2013)。また、MetS病態モデルにARBを投与すると血圧の低下とともに膀胱上皮由来のメディエーターの放出が低下、1日の尿量も減少した。したがってARBはMetSに伴う過活動膀胱の治療薬になり得る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたメタボリック症候群の病態モデルに下部尿路機能障害が存在することが明らかとなり、そのためその後の研究が順調に進んだ。特に膀胱局所のRASに変化が生じている可能性が示唆される結果が出始め、末梢レベルでの変化に重点を置いて研究を進めてきた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でメタボリック症候群病態モデルの膀胱局所において、虚血が関与すると思われる上皮の変化や、また局所におけるレニン・アンギオテンシン系の亢進が蓄尿障害を惹起する可能性が示唆された。今年度はその原因としての膀胱血流障害、そしてより高次の脳にターゲットを当てて研究を開始する。脳には下部尿路機能を司る中枢や自律神経の高次中枢が存在し、特に視床下部は自律神経活動を制御し、またvasopressinのような各種ホルモンの産生と分泌を行っている。メタボリック症候群病態モデルに生じる酸化ストレスがどのように下部尿路機能に影響し、また酸化ストレスを抑制することがその治療に繋がるか、末梢と中枢において検討する。
|