研究課題
近年生殖補助医療(ART)の普及に伴い、本来非常に稀なインプリント疾患の増加が指摘されている。申請者らは、男性不妊症精子DNAを用い、8つのインプリント領域(DMR)のDNAメチル化について解析し、その異常の頻度がおよそ25%であることを報告した。この事実はインプリント異常症の原因として、精子の影響が大きいことを示している。マウスでは、これまでに22のインプリント領域が同定されているが、ヒトへの保存性に関しては明らかではない。本研究では、まず全てのヒトインプリント領域について明らかにする。次に多数例の不妊症男性精子を用い、インプリント異常の頻度・程度・影響を受けやすい遺伝子について解析する。さらに、メチル化異常を示す精子のパターン分類、精子形態・メチル化制御因子(MAT2A,DNMTs)の構造・機能解析を行い、ARTに用いる精子のDNAメチル化異常の発症メカニズムについて、総合的に検討することを目的とする。本年度は、ヒトインプリント領域の同定と、不妊症男性精子の収集とメチル化インプリントの解析を行なった。まず、ヒトインプリント領域の同定は、精子型インプリント3領域と卵子型インプリント19領域を、正常血液細胞、精子細胞を用いて明らかにした。また、この領域内に含まれるDNA多型も明らかにした。次に、精子サンプルは、165例(乏精子症59例)収集し、22領域に関して、Bisulphite Polymorphic PCR法で正確に評価した。その結果、全体でおよそ29%に異常を認め、特に乏精子症では、60%と高頻度に異常を認めた。
2: おおむね順調に進展している
不妊症男性精子の収集は、目標どおりに行なわれた。また、ヒトインプリント領域の同定とDNA多型を明らかにした。この結果を基に、正確なメチル化インプリントの解析が可能となり、信頼のおける成果が得られた。
ヒト男性精子のインプリント異常について、網羅的な解析を正確に行い、その異常の頻度、程度、影響を受けやすい領域を明らかにする。また、異常のパターン分類により、DNAメチル化異常の発症メカニズムについて、総合的に検討する。
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