研究課題/領域番号 |
23390385
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有馬 隆博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80253532)
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研究分担者 |
岡江 寛明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10582695)
宮内 尚子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術補佐員 (60596162)
樋浦 仁 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70451523)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生殖補助医療 / メチル化インプリント / ゲノムインプリンティング / 精子 |
研究概要 |
少子化社会である我が国では、年間2万人ものART出生児が誕生し、今後もART出生児が増加することが予想される。ARTの普及により、ART後の出生児(ART出生児)に、これまで非常に稀であった先天性ゲノムインプリンティング異常症の発症頻度が増加していることが、世界中で報告され話題となっている。このゲノムインプリンティングは、生殖細胞形成過程で、卵子由来と精子由来のゲノムの特定領域に、DNAメチル化を確立することで親由来の区別を行う仕組みである。本研究では、不妊症男性精子に着目した。同時に、リスク要因となりうるART操作、排卵誘発法や量、胚培養液の種類などについても検討する事を目的とした。本年度は、197検体(乏精子症59例)収集し、22領域に関して、Bisulphite Polymorphic PCR法で正確に評価した。その結果、25.4%でメチル化に異常が確認された。遺伝子別にみると、精子型の異常は18%、残りは卵子型に異常を認めた。精子型、卵子型の両方に異常を持っているのは50例で、重症型乏精子症が19例であった。精子数(濃度)との関連では、重症乏精子症群で66.7%、中等度乏精子症群で11.1%、正常精子群で22.2%が、3種以上の遺伝子に異常を持つことが確認された。次に、メチル化異常と精子性状(精液所見)との関連性について検討した。メチル化インプリント異常は精子濃度、運動率と負の相関を示し、奇形率とは正の相関を認め、メチル化異常の頻度は、精子所見と相関を示した。また、メチル化異常の程度も、同様に重症型乏精子症で最も高かった。これらの結果より、メチル化異常の頻度、程度は、精子形成能と深い関連がある事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト男性精子について、網羅的かつ正確なメチル化解析を行い、その異常の頻度、程度、影響を受けやすい領域を明らかにした。同時に精液所見との関連性を明らかにし、精子形成過程における成熟能がメチル化を深く関わる事を示した。また、異常のパターン分類により、DNAメチル化異常の発症メカニズムについて、総合的に検討している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、DNAメチル化異常の発症メカニズムについて、総合的に検討する以外に、ART出生後のインプリント異常を認めた疾患について、ART治療法の内容、基本情報を基に評価、またメチル化パターンの異常について検討し、リスク要因の同定に迫る。
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