研究課題
マウスの実験系では、従来注目されていなかった少数しか子宮にいないNKT細胞が、LPSに対する炎症を惹起するのに重要で、NKT細胞を欠損するマウスでは樹状細胞、T細胞、NK細胞が中等量のLPSで活性化されず、早産率も低率である事を見出し論文化した(J.Immunol.2012:188:4681)。また流産にはNK細胞のNKG2Dを介したTNFαの産生が重要である事も見出した(J.Immunol.2013:190:3639)。制御性T細胞(Treg)の検討ではBALB/c(♀)x DBA/2(♂)の系で父親抗原特異的制御性T(PA-Treg)細胞をフローサイトメトリーで純化し、mRNAの発現をDNA arrayで検索し166遺伝子が増加し103遺伝子が減少することを見出し、現在詳細につき検討中である。精嚢切除で精漿を除くと着床前の子宮所属リンパ節、着床後の子宮にPA-Treg細胞が有意に減少する事を見出した(論文作成中)。更に精漿がないと樹状細胞のMHC classII、CD80/86の低下が起こらず、免疫抑制効果が認められなかった。ヒトでは流産症例を胎児染色体正常と異常に分け、子宮内膜中のTreg分画を検討した。その結果、胎児染色体正常流産では着床部のTregが減少しており、かつKi67陰性のTreg細胞が減少していた(J.Reprod.Immunol.2013:97:104)。現在Treg細胞をmemory、naive、胸腺由来、胸腺外、hCG-R陽性に分画し、いづれのTreg細胞が妊娠維持に最も重要かを検討している。脱落膜NK細胞と末梢血NK細胞でmiRNA発現パターンを網羅的に解析し、19ヶの胎盤由来miRNAが増加する事を見出した。更に脱落膜と末梢血NK細胞のmRNA発現をDNAチップを用い検討した。現在miRNA発現とmRNA発現の相関を検討しているところである。
2: おおむね順調に進展している
早産とNTK細胞との関連性を示す論文を中国のLin教授との共同研究でJ. Immunol誌に2012年に掲載した。これまで不明であった、どの細胞が最初に病原微生物を認識し、炎症を起こすかの疑問を明らかにしたものである。流産とNK細胞については米国のSharma教授との共同研究でJ.Immunol誌に2013年に掲載した。NK細胞の中でもNKG2が活性化されTNFα産生を誘導することが流産につながり、抗TNFα療法が有効である可能性を示した。ヒト妊娠でTreg細胞が胎児染色体正常流産でのみ子宮内膜の着床部で減少することを論文(J.Reprod.Immunol.2013)として発表した。共同研究者である田渕氏との研究で、父親抗原特異的Treg細胞を純化してmRNA発現をその他のTreg分画と比較することができた。現在、さらに父親抗原特異的Treg細胞を子宮より純化して解析を進めている。また瀧澤教授との共同研究で胎盤由来miRNAを子宮NK細胞に認めたので、現在、その関連性を検討している。胎児由来の胎盤から分泌されるmiRNAが母体リンパ球に取り込まれることもin vitroで確認した。これらの内容についても、現在論文化を進めている。
父親抗原特異的Tregならびに妊娠維持に必要なTreg分画をマウス、ヒトで明らかにすることで、流産予後、早産、妊娠高血圧腎症の予知につなげることを検討している。Treg分画を現在、増殖性Treg、休止期Treg、胸腺由来Treg、胸腺外Treg、メモリーTreg、ナイーブTreg、HCG-R陽性Treg、HCG-R陰性Tregに細分化して、ヒトならびにマウス妊娠で検討している。どの分画が妊娠維持に最も重要かが、まもなく判る段階に来ている。このマーカーを用いてヒト流産、早産、妊娠高血圧症候群で、予後や発症以前の予知マーカーとして使用できるか検討したいと考えている。また胎盤由来のmiRNAが子宮NK細胞に取り込まれているという画期的な知見が得られた。その結果、特定のmRNAが抑制され免疫系が制御されているかが判れば、免疫学的な常識をくつがえす発見になる。すなわち、胎児由来の胎盤からmiRNAが母体血中に放出され、母体免疫系を負に制御することが証明されることになる。これらは妊娠に特異的な免疫制御ではあるが、腫瘍免疫にも応用できる。基礎となるデータ収集は終わったので、あとはon silicoで検索し、in vitroの系で次年度証明したいと考えている。
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