研究課題/領域番号 |
23390391
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
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研究分担者 |
野口 武俊 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10464661)
吉田 昭三 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40347555)
吉澤 順子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80526723)
春田 祥司 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30448766)
重富 洋志 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20433336)
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キーワード | 子宮内膜症 / 卵巣癌 / 細胞周期調節 |
研究概要 |
研究の目的 卵巣子宮内膜症性嚢胞から悪性化をきたす多段階発がんの各ステップにおいて、活性酸素種によるゲノムDNAの酸化ストレスの視点から、その発がん候補遺伝子の突然変異しやすい特定部位の同定と発がんに及ぼす影響を調べる。次に「鉄」投与による卵巣明細胞腺癌の自然発がん動物モデルを作成し、がん化のメカニズムの解明と治療法を確立することを目的とする。 研究成果 1.「鉄」および関連遺伝子産物の局在を免疫染色と遺伝子発現で確認 正常子宮内膜(増殖期、分泌期、妊娠期、閉経期)、子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞、腹膜病変)(計80例)、卵巣がん(計90例:漿液性・粘液性・類内膜・明細胞腺癌)組織のパラフィンブロックおよび各種培養細胞を用いて、EMA、カルレチニン、HNF-1betaの免疫染色と遺伝子発現を検討し、明細胞腺癌における発がん機序として、子宮内膜逆流説を発生母地として立証した。 2.酸化ストレス、特に「鉄(Fe-NTA)」添加により変化する遺伝子群とその突然変異の同定 ARID1AおよびPIK3CA遺伝子の遺伝子変異ホットスポット領域にグアニンG→チミンT突然変異が起こっているかどうか塩基配列を調べ、それぞれtransversionとtransitionの割合を調べた。その結果、特にPIK3CAは酸化ストレスとの関連を見出した。8-oxoG特異抗体を用いた免疫染色では、子宮内膜症と明細胞腺癌に強陽性にその発現が認められた。 3.HNF-1betaの過剰発現・ノックアウトによる癌細胞の性格 5種類の明細胞腺癌細胞のうちHNF-1beta非発現細胞ES2および漿液性癌細胞SKOV(HNF-1beta非発現)を用いて、ウイルスベクター導入によるHNF-1beta恒常的発現株の樹立を行った結果、細胞周期停止を起すことを証明した.その後にチェックポイントを外すと細胞死が確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想通り、ARID1AおよびPIK3CA遺伝子の遺伝子変異ホットスポット領域にグアニンG→チミンT突然変異が起こっており、それぞれtransversionとtransitionの割合を調べることができた。HNF-1betaの過剰発現・ノックアウトによる癌細胞の性格を検討し、細胞周期調節因子のリン酸化により細胞周期停止が起こるが、チェックポイント機能不全により細胞死が起こらないことを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
HNF-1betaの発現を修飾する薬剤によるがん細胞機能評価 HNF-1betaを直接抑制する(入手可能な薬剤としてMEDICA[○!R])あるいはその下流遺伝子発現を抑制する薬剤、試薬(DPP4インヒビター、ACE2インヒビター)を培養細胞に添加しその増殖能、浸潤能、アノイキス抵抗性、抗がん剤耐性の変化を比較する。この薬剤が発見できればsiRNAを導入しなくても抗がん剤感受性促進に関する臨床的なアプローチが可能となる。 今までの検討によりHNF-1beta機能を抑制するためには、Chk1 inhibitorを使用することが判明した。抗がん剤との組み合わせによる臨床応用が期待できる。
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