研究課題/領域番号 |
23390393
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山岨 達也 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60251302)
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研究分担者 |
吉川 弥生 東京大学, 医学部附属病院, その他 (00452350)
岩崎 真一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10359606)
樫尾 明憲 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20451809)
坂本 幸士 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50323548)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 老化 / 蝸牛 / ミトコンドリア / 酸化ストレス / 脳・神経 |
研究概要 |
遺伝子改変マウスを用いた実験とサプリメント等の効果を調べる実験を中心に行った。解析はABRを用いた機能解析、光顕・免疫染色による組織観察、DNA microarrayによる遺伝子解析等を行った。Glutathione Reductaseの老人性難聴への影響の解析はノックアウトマウスのbackgroundにC57BL/6マウスを用いていたが、Ahl遺伝子を持つことが問題であるため、CBA/CaJとbackcrossingを行い、改めて解析を開始した。カロリー制限による老人性難聴の抑制にはSirt3が重要な役割を果たすと報告されているため、その下流にあるIdh2 (isocitrate dehydrogenase 2)のノックアウトマウスの解析を開始した。MnSODのヘテロマウスでは野生型と比べてABR閾値の加齢による変化と組織学的変化に差がないものの8-hydroxydeoxyguanosineの発現は増加し、一方4-hydroxynonenalの発現には差が無いことが判明した。現在、騒音環境での飼育条件で野生型と難聴に差が出るか解析中である。異なるstrainマウスの通常食摂取とカロリー制限の2および15カ月での蝸牛内遺伝子発現の解析は結果を解析中である。C57BL/6マウスの通常食、高脂肪食群にシンバスタチン、プロブコール、CoQ10を投与した予防実験ではABR閾値に有意な差は見られなかったが、酸化ストレスなどに差が無いか、組織の解析中である。内耳におけるAGEとRAGEの発現は免疫組織学的に確認できたが、若年と加齢マウスの蝸牛での発現に明らかな差がみられなかった。最後にautophagyの影響につきLP3-GFPマウスを用いて解析を開始し、有毛細胞内にautophagyが存在することを確認している。今後、飢餓条件やストレス環境の影響を検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウスを用いた実験ではC57BL/6マウスを用いていたが、Ahl遺伝子を持つことが生理的な老化による難聴とは異なると度々指摘されるため、CBA/CaJとbackcrossingを行った。このため解析をやり直すこととなり、遺伝子改変マウスの解析が遅れている。一方、Glutathione Reductaseノックアウトマウス、MnSODヘテロマウスのほかに、Idh2 (isocitrate dehydrogenase 2)のノックアウトマウスの解析も開始できており、分子メカニズムの多方面からの解析は予定よりさらに進んでいる。異なるstrainマウスの通常食摂取とカロリー制限の2カ月と15カ月での蝸牛内の遺伝子発現解析はデータが膨大であり、個々の結果は出てきているが、まだどのようにデータをまとめるか解析方法を検討中である。通常食に対して高脂肪食を与えた時のシンバスタチン、プロブコール、CoQ10の効果は思ったほど明らかではなく、仮説を実証しにくい状況にある。このため、免疫組織学的に酸化ストレスの検討も加えているが、研究の進行状況はほぼ予定通りである。内耳におけるAGEとRAGEの発現は免疫組織学的に確認でき、予定通りではあるが、若年と加齢マウスの蝸牛での発現に明らかな差がみられなかったため、今後酸化ストレスなど負荷のかかった状況も検討する必要が出てきている。Autophagyについては初期の予定にはなく新たに開始したものであるが、すでのLP3-GFPマウスを用いて有毛細胞内にautophagyが存在することを免疫組織学的に確認できている。このため今後、飢餓条件やストレス環境の影響など、新しい検討ができる状況になっている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変マウスを用いた実験は予定通り進んでおり、ABRによる解析の他、組織学的解析を進めることで、データをまとめて報告できる予定である。異なるstrainマウスの通常食摂取とカロリー制限の2カ月と15カ月での蝸牛内の遺伝子発現解析はデータが膨大であるため、データの解析方法の検討が必要であり、海外の共同研究者とも連絡を取っている。場合によってはbioinformaticsの専門家と共同研究の形で展開することも検討している。内耳におけるAGEとRAGEの発現については免疫組織学的評価のみでは解析が困難な可能性もあるが、さしあたっては酸化ストレスを負荷する急性実験で発現の変化を検討した上で、慢性実験について計画を立てる。AutophagyについてはすでのLP3-GFPマウスを用いて有毛細胞内にautophagyが存在することを免疫組織学的に確認できており、まずは飢餓条件やストレス環境の影響などを検討する。またmitophagyの関与や酸化ストレスでの変化なども計画中である。
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