研究概要 |
EBVのレセプターはB細胞表面に発現するCD21である.1990年代の報告ではCD21は上皮,Tリンパ球で発現しないとされる.1994年,申請者も同様の結果を得た.また,CD21陰性である咽頭上皮細胞への感染実験によりウイルス複製誘導による受容体非依存的ウイルス細胞内侵入を報告した.しかし今日,細胞表面抗原解析テクノロジーが飛躍的に進歩し,発現量の少ない蛋白解析が可能となり,過去の通説が次々と刷新されている.また,上気道における内因性免疫発現を調査した研究は皆無である そこで,過去10年に金沢大学病院で同一患者から摘出された口蓋および咽頭扁桃パラフィン標本を用いて,まず口蓋および咽頭扁桃におけるEBV感染細胞と感染様式,さらに,APOBECファミリーのうち村松博士から抗体を供与されたAID,APOBEC3G発現を年代ごとに比較した. 予備実験としてこれらの抗体のパラフィン組織上での免疫組織化学的解析の至適条件の設定を行ったAID,APOBEC3G,に対する免疫組織化学法にてEBV陽性細胞の分画と感染状態,さらにAPOBEC発現を定性的に評価し、咽頭扁桃と口蓋扁桃において明らかな発現パターンの差がないことを判明した。 また、口蓋扁桃,咽頭扁桃いずれにおいてもEBVが感染細胞内で潜伏感染しており,感染細胞と共存する潜伏感染(EBV転写産物EBERs,LMP1が発現)パターンを示す細胞のポピュレーションはまれであった.
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