研究概要 |
今年度は特に鼻粘膜上皮の感染系を確立し,その系を用いてインターフェロン産生について解析した.そこでは鼻粘膜からはRSVや呼吸器ウイルス感染でI型インターフェロンでなく,III型インターフェロン(IFN-λ)が主に産生されることがわかった.このことは,上気道の鼻粘膜での抗ウイルス作用が粘膜上皮特有のインターフェロンを主として産生し感染防御に関与していることがわかった. 一方,鼻粘膜上皮の自然免疫では上皮バリア機能が各種因子において複雑に調節されているが,鼻粘膜上皮ではプロテアーゼなどの上皮バリア減弱因子に対して,非常に速い修復力を持つことがわかった. このように,鼻粘膜上皮は独自の自然免疫機構を持ち外来因子に対して防御機構を構築していることがわかった. 一方,上皮内樹状細胞と上皮細胞との関連では,新規タイト結合であるトリセルリンの鼻粘膜上皮での分布を解析した,このトリセルリンは細胞頂端部に存在し,3細胞の接点に分布していることが免疫組織学的,免疫電子顕微鏡にて鼻粘膜でも同様の分布を示していることを確認した.このタイト結合は細胞頂端部での樹状細胞の突起の伸長に関連していることが考えられ,自然免疫での樹状細胞の鼻粘膜上皮での抗原捕捉と認識に重要であることが推察できた.樹状細胞にもトリセルリンが発現していることから,上皮と樹状細胞が相互にタイト結合タンパクを発現し,バリア機能を維持しながら抗原捕捉や免疫監視を行っていることが推察できた. このように,上皮と免疫担当細胞の相互作用を,自然免疫にかかわる最前線の部位について詳細に検討した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度へ向けて,これらのウイルス感染の結果をもとに抗ウイルス作用を持つ物質の評価系として応用し,新しい抗ウイルス分子のスクリーニングを始める予定である. 特に,今回用いたRSVは乳幼児に多く罹患する感染症であるため,安全性の高い機能し食品の開発も考慮している.
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