研究課題
本研究で我々はheterozygousのAdrenomedullinノックアウトマウス(ADM+/- )とRAMP2ノックアウトマウス(RAMP2+/-)で、酸素性網膜症を発症させてその網膜血管新生における役割を検討した。さらに、血管内皮細胞のみで選択的に発現させることができるRAMP2ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)をもちいて、胎生期から新生児期の網膜血管新生への関与を検討した。さらに、我々はAdrenomedullinの活性中和抗体を用いて、酸素性網膜症における病的網膜血管新生を抑制できるか否か検討した。酸素性網膜症における、網膜血管新生の発芽(tufts)、無灌流領域(無血管野)、そして虚血の領域はADM+/-の網膜では、wild typeよりもすべて小さくあるいは少なくなっていた。これらの網膜ではvascular endothelial growth factor (VEGF)やeNOSの発現が減少していた。DI-E-RAMP2-/-は網は膜血管の発生異常を示した。Adrenomedullinが網膜血管の内皮細胞の遊走と増殖を促進することが関与しているかもしれない。さらに、我々はAdrenomedullinの活性中和光体が病的な網膜血管新生を抑制することも確認した。以上の結果からAdrenomedullinとそのレセプターであるRAMP2の経路は、網膜血管新生に重要な働きをなしている。これらは、病的な網膜血管新生の治療に応用できる可能性があると考えている。以上のような結果を、研究の途中経過のまとめとして報告した。Adrenomedullin-RAMP2 System Is Crucially Involved in Retinal Angiogenesis. Am J Pathol 2013, 182: 1-11 (IF4.89)
2: おおむね順調に進展している
アドレノメデュリンが網膜の血管の発生、発達、病的あるいは生理的な血管新生に大きく関与していることが明らかとなってきた。このことは、網膜血管の透過性高進による黄斑浮腫の発生に大きく関与することを示唆している。研究本来の目的に少しずつ近づいてきている現状と言える。
現在使用しているRAMP2ノックアウトマウスにあわせて、糖尿病網膜症類似の無灌流領域、網膜血管新生、漏出などが起きるAkinba mouseを手に入れようと計画中である。これらのマウスを用いて、マウス用蛍光眼底造影、Optical coherence tomographyなど用いて、RAMP2ノックアウトマウスとあわせて黄斑浮腫のメカニズムを解明する予定である。人体では網膜光凝固前後での眼内のvascular endothelial growth factor (VEGF)の濃度およびRAMP2の濃度変化を確認することができない。これをAkinba mouseで糖尿病網膜症類似の網膜血管新生と網膜浮腫を発症させた後に、実験的に汎網膜光凝固をおこない、網膜症の活性が低下した時点で、眼内液を採取してVEGFレベルとRAMP2レベルが低下しているかどうかを検討する。眼内VEGFレベルが低下していれば網膜浮腫の軽減効果が得られていることが予想されるので、Optical coherence tomographyで浮腫の減少と、VEGFレベル、RAMP2レベルの関係を検討する。上記モデルで、眼内VEGFレベルと、RAMP2レベルの変化による糖尿病網膜浮腫の変化を観察して、これを抑制することで糖尿病黄斑浮腫の実験的治療が行えるかどうか検討する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
American Journal of Pathology
巻: 182 ページ: 1-11
doi: 10.1016/j.ajpath.2013.02.015.
Tohoku J Exp Med
巻: 228 ページ: 229-237
10.1620/tjem.228.229