研究概要 |
1.手術前後の黄斑上膜患者を対象として黄斑部網膜機能の変化を調べたところ、主に網膜中層の解剖が、網膜機能と関係することがわ かった(IOVS,2013)。このことにより、各種の新生血管病に発生する網膜浮腫についても同様のメカニズムが存在することが示唆さ れた。 2.これまでの研究期間により開発したファイバーOCTを用いて、豚眼実験、麻酔下の家兎眼に実験を行い、倫理委員会の承認のもと、 3例の臨床例に対し硝子体手術中にOCT画像を記録した。国内特許出願を行い、国際特許出願の準備中である。豚眼、家兎眼、臨床使 用において網膜血管、脈絡膜血管、毛様体神経網膜、網膜裂孔、網膜剥離等が観察された。これらについては、論文投稿中である。 3.糸状の温度計を用いて85症例に硝子体手術中の温度変化を測定した。黄斑上膜、糖尿病性網膜症などにおいては、白内障手術、硝子 体切除により温度は低下し、眼内レーザー光凝固、膜剥離においては、温度は上昇し、その変化は各疾患の別はなく共通な変化が あった。強度近視では温度変化は少なかった。特に、増殖性糖尿病網膜症の手術中の光凝固と温度変化に注目すると、その密接な関 係が証明でき、論文として受理された(IOVS,2014)。 4.半側網膜中心静脈閉塞眼(hemiCRVO)と、網膜静脈分枝閉塞(BRVO)眼にて、眼内血管内皮増殖因子(VEGF)濃度と網膜電図所見を比較し た。hemiCRVO眼は、BRVO眼よりも眼内VEGF濃度が有意に高く、30HzフリッカERGの潜時が有意に延長していた。これは、hemiCRVO眼 では虹彩新生血管発生のリスクがBRVO眼よりも高いという過去の報告と一致し、hemiCRVO眼ではBRVO眼に比べて網膜虚血が強いこと が、網膜機能・分子生物学的にも証明された。この結果は、論文として受理された(JJO, 2014, in press)。
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