研究課題/領域番号 |
23390404
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
木下 茂 京都府立医科大学, 医学研究科, 教授 (30116024)
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研究分担者 |
川崎 諭 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (60347458)
上野 盛夫 京都府立医科大学, 医学研究科, 助教 (40426531)
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キーワード | 角膜上皮細胞 / コア転写因子 / 形質転換 / エピゲノム |
研究概要 |
1.ケラチン12遺伝子の転写制御領域を同定する。 ウサギ角膜上皮細胞を用いてケラチン12遺伝子の転写開始点上流のプロモーター領域を解析した。まずウサギゲノムからPCRにてケラチン12遺伝子の上流の配列を様々な長さで増幅してルシフェラーゼアッセイ用のベクターに組み込んだ。ウサギ角膜上皮より角膜上皮細胞を酵素処理にてシングルセルまで分散処理して播種し、4時間後にルシフェラーゼアッセイベクターを遺伝子導入した。結果、翻訳開始点より350bpまでの間に転写活性化領域が存在することが示唆された。内因性にケラチン12遺伝子を発現しない虹彩ストローマ細胞や経代培養したウサギ角膜上皮細胞ではレポーター活性が著しく低下することから初代培養細胞におけるリポーターアッセイのシグナルは確かにケラチン12遺伝子のプロモーター活性を反映しているものと推測された。ゲルシフトアッセイも試みたが、TATA boxへの強いシグナルが得られた以外には強いバンドシフトは得られず、一つの転写因子というよりも複数の転写因子によって転写制御されている可能性を示唆した。 2.培養過程におけるケラチン12遺伝子の発現変化 ウサギ角膜上皮細胞を酵素処理して播種し、様々なタイムポイントでケラチン12の発現量を調べた。その結果、ケラチン12遺伝子は分散後24時間でもとの3%まで発現が低下し、さらに48時間ではもとの1%以下にまで低下した。コンフルエント到達後にも2週間程度培養維持するともとの30%まで発現が回復した。分散処理によるケラチン12遺伝子発現量の低下はPD98059(ERK阻害剤)によってある程度キャンセルされた。よって分散処理によるMAP kinaseシグナル活性化が原因であると考えられた。このため、自殺遺伝子による細胞選択は困難であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画した2つの項目のうち、ひとつについては完了した。もう一つについては別の実験で、ケラチン12遺伝子の発現がトリプシン処理による分散処理や、長期間の培養によって著しく低下することがわかり、そのため自殺遺伝子による選択を行うと残存している細胞においてもケラチン12遺伝子の発現が低下することになり、選択は極めて難しいと判断された。
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今後の研究の推進方策 |
ケラチン12遺伝子は細胞の置かれた状況などによって発現量が著しく変化するため、当初に考えていた方法では目標の達成は難しいと判断される。siRNAによるloss of functionのアプローチではなく、コア転写因子候補の強制発現によるgain of functionのアプローチへの変更を考えている。
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