研究概要 |
ラットの肺より得られた間葉系の培養細胞株を確立し、その性質を検討した。この細胞は、自己増殖能を有し、軟骨細胞や脂肪細胞への分化誘導は難しいものの、容易に骨細胞への分化が誘導できることが示され間葉系幹細胞としての性質を部分的に持っていることが示されている。この細胞と肺胞上皮細胞を共培養した場合に、培養開始後28日を経過した後にもII型上皮の形質を持つ細胞が集合する構造や、上皮による胞状構造が維持されることが示された。今回、ヒトで同様な培養細胞を得るために、ラットにおける培養細胞の採取方法について、検討を加えた。 ラットの肺組織をエラスターゼ処理することで得られた細胞に対して、16時間トリプシン処理を加えても生存し続ける細胞について、CD90およびCD29陽性の細胞をソーティングにより採取し培養した。その結果、こうして得られた細胞は、上記の細胞と同様に容易に骨細胞への分化が誘導できることが示されており、同じ細胞集団で構成されている可能性が示唆された。さらに、こうして得られた細胞について、エンドトキシン肺傷害モデルに投与した場合の治療効果について、検討した。イソフルラン麻酔下に、LPSを5mg/kg経気道的に投与し、18時間後にfMLPとNeutrophil Elastase 680 FASTというin vivoイメージ用の蛍光色素を経気道投与し、その6時間後に好中球エラスターゼの肺内での活性を,IVIS撮影装置で定量評価した。上記細胞を投与したマウスでは、非投与マウスと比較して、好中球エラスターゼ活性が有意に抑制されることが示された。
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