研究実績の概要 |
我々が用いた培養細胞系は肺組織に対して長時間トリプシン処理を行い、生存した細胞を増殖させることで得られる培養細胞であり、以下、Lung derived trypsin resitant (LTR)細胞と記述する。この細胞は、SDラットに対して、ペントバルビタールの大量投与を行い安楽死の後、肺を摘出し、気道にエラスターゼ処理の後、細断し、フィルター処理によって得られた細胞をトリプシン存在下に16時間培養し、生細胞をMEMα+10%FBS培地で培養したものである。 LTR細胞には、①CD29陽性CD90陽性の形質が維持され、骨分化能を有するが、軟骨組織や脂肪組織への分化を誘導してもこれらの組織への分かは弱いか全く見られない。②TIMP1,4(プロテアーゼインヒビター)およびα1アンチトリプシンのmRNAの発現量は多く、タンパク分解酵素絵の態勢との関係が考えられる③KGFの発現量が多く、肺胞II型上皮の形質維持または誘導に関与している可能性がある④細胞自身のSP-A,B,C,Dの発現は極めて低い⑤in vitroの実験において、BMSCと同様に、肺胞様構造の形成を誘導するはたらきがあるなどの特徴があり、in vivoの実験においてLTR細胞は、マウスの急性肺傷害を軽減する作用があることが示された。今回ヒトの組織において、同等な細胞が存在するか、実証を行うことができなかったが、今後検討を進めることで、急性肺傷害における組織の再生を促す治療手段としての可能性を引き続き検討していきたいと考えている。
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