研究課題/領域番号 |
23390414
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
中谷 壽男 関西医科大学, 医学部, 教授 (70188978)
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キーワード | 脊髄損傷 / 脊髄再生 / 骨髄間質細胞 / 単核球 / 髄液内投与 / 幹細胞 |
研究概要 |
本研究は、急性期脊髄損傷患者の骨髄から、自己の骨髄細胞を採取した後に腰椎穿刺にて髄液中に投与し、損傷部に生着した細胞の働きにより脊髄再生を図る臨床試験である。本試験は免疫学的、倫理的問題がなく、実用的な脊髄再生療法として期待出来、関西医科大学高度救命救急センターにおいて5例に実施し、最長5年経過中であるが細胞移植に伴う有害事象は全く認めていない。また、歩行可能症例、起立訓練中症例を含む症状の改善著明な改善を3例に認めている。平成23年度以降は、今後の本治療法を確立普及させるために若干の変更を加えることとし、そのために幹細胞に関する厚生科学審議会の審査に精力を注ぐ一方、これまでの経過をまとめ、論文として発行することが出来た。 今後の目的は、さらに症例数を重ね、安全性の確認とともに有効性の解析、適用条件の確立により、脊髄損傷患者への新たな治療法として確立することにある。従来、骨髄間質細胞を得て培養増殖後に髄注投与してきたが、更に広く実用化を図り、治療法として確立して行くために、骨髄液を採取後、単核球を分離し、直ちに髄液内に投与することで、培養に伴う症例数の限定や多額の経費を減らすことを検討した。動物実験ですでに有効性を確認している。さらに、幹細胞を用いる臨床試験であるために、厚生労働省のヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会において承認を受ける必要があった。厚生科学審議会より科学的、倫理的に妥当である旨、厚生労働大臣に答申され、平成24年2月10日付で厚生労働大臣より、本研究を実施することについて許可を頂く事が出来た。その後、必要物品を揃えるとともに、臨床試験実施の準備を整えた。現在、患者も発生しており、登録に向けて準備中である。今後、これらの作業が軌道に乗れば、出来れば、平成24年中に数例以上、最大十例の症例に実施して結果を集計できるようにしたいと準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト幹細胞を用いた臨床試験を実施するためには、平成18年以降、厚生労働省の、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会に於いて、議論し承認を得なければならない。本臨床試験の実施について同審査会に於いて多くの質問をいただいた。これらについて議論を重ね、最終的に承認をいただき、厚生科学審議会の答申をへて、厚生労働大臣から臨床試験実施の許可をいただいたのが年度末に近くなったために、その後、直ちに実施体制を整え、現在、患者登録に向けた準備を進めており、近く臨床試験に入ることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
上記のごとく、体制はほぼ整い、患者も発生しており、患者登録に向けて準備を進めている。研究を遂行する上での最大の問題点は、脊髄損傷患者を救命救急センターで長期入院させることは出来ず、リハビリテーション施設へ転院させねばならないが、その転院先の確保に極めて難渋する点である。転院先が確保できるなら、臨床試験は円滑に進むが、転院先の確保が困難な状況では、症例数を増やすことが困難となる。救命救急センターに脊髄損傷患者が滞る、いわゆる出口の問題、が今後の最大の問題点である。
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