集中治療医学における循環管理は、患者の生命予後を直接に決する重責を負い、専門知識や技術、豊富な経験を要する高度医療であり、医師の身体的心理的ストレスは大きい。特に医師や専門医の不足する医療過疎地においては、過労を背景とした医療過誤が社会問題となっている。本研究では、循環系の内部3特性(心臓ポンプ機能・循環血液量・血管抵抗)が循環動態(血圧・心拍出量・心房圧)を決定する循環系モデル(循環平衡理論)を基に、患者の循環動態を計測して、その情報をCPUに送り、循環系モデルを用いて観測不可能な内部3特性を定量化(=自動診断)、独自制御アルゴリズムで循環特性を正常化するための治療命令信号を計算し、ポンプ外部制御で4薬剤(強心剤・血管拡張薬・輸液・利尿剤)を投与する自動医療システムを開発した。本システムは専門医の思考は判断をコンピューター上に再現し、診断や治療の決定を数値的に行う利点や、閉ループ制御によって生体計測-診断-治療を毎分毎秒等に更新し、急な病態変化に自動対応できるという利点もあった。実際に開胸下にて重症心不全動物(犬等)の循環異常を自動治療でき、さらに開胸下ではない閉胸下医療現場での実用化を目指して、左心房圧の連続推定法の開発、ならびにそれを組み込んだ、身体低侵襲な自動薬物医療システムの開発、多重安全装置・アラーム装置・患者個人適応制御の開発、に取組み、試作した。また一方、循環管理や循環器病の治療において、自律神経異常の機序解明や神経を正常化する医療はますます重要だと認識されるようになっている。そこで未来医療の試みとして、循環と自律神経を同時に最適化するような神経-薬物統合自動医療システムの開発を目指し、自律神経-循環系の相互作用について神経科学的なアプローチによって取り組み、循環系臓器における自律神経(交感神経・迷走神経)の分布や構造、活動をイメージング解析等を行った。
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