研究課題
計画2年目には,原子間力顕微鏡に超高速撮影機能ならびに高速画像解析機能を追加した.平成21~22年度採択の科学研究費補助金を用いた研究で,培養細胞や活性型タンパク,さらには生菌等の湿潤試料をナノスケールで観察する条件設定を確立することが可能となり始めていた.そこで,さらに1秒間に10コマ以上の撮影能力を有するスキャナー消耗品を必要最低限度かつ最適な装備に絞り込んで選定し交換した.この更新システムを用いて,初年度計画において選出したレンサ球菌(まずは生きた全菌体)が,好中球表層に作用しNETs誘導を起こす過程を一分子ごとにリアルタイム画像で追跡し,超微細形態学的に解析した(担当:寺尾).上記までの実験計画が順調に進捗したため,初年度に同定したNETs発現を亢進あるいは阻害するA群レンサ球菌由来の分子や,それらの特異抗体の投与によるNETs免疫コントロール法についても検討を加え始めた.また,一連の実験過程で得られた材料を用いて,NETs発現に関与する好中球レセプターの検索も行った(担当:川端・中田).その結果,好中球細胞にNETs発現を誘導するレンサ球菌由来の分子の同定に成功した.当該分子は,ゲノムデータベースを用いたin silico法と旧来からの生化学的in vitro分析法の組み合わせにより,Streptococcus pneumoniae alpha-enplaseと決定できた.
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画で提唱した仮説を裏付けるような,好中球NETs誘導タンパク質を肺炎レンサ球菌のタンパク画分から発見し,さらに同分子を同定・分離できた.そして,その研究成果を専門分野の英文雑誌に投稿し,これが査読を受けて受理されたことから,おおむね当初の計画通りに進展していると考える.
レンサ球菌由来のNETs免疫系作動因子の多次元ナノライブイメージング同定本申請計画の最終年度では,初年度に構築したレンサ球菌のNETs誘導因子の候補ライブラリー(組換え体,精製細胞壁,および遺伝子欠失変異株)を用いて,計画2年目に至適化した顕微鏡観察技術に供し,好中球NETs系を誘導する細菌因子の詳細な同定とメカニズム解析を試みる(担当:寺尾).(1)ヒト好中球にレンサ球菌の組換えタンパク,精製細胞壁,遺伝子欠失変異株(平成23年度に作製分)を添加し,平成24年度に至適化した顕微鏡システムでNETs誘導能を観察する. (2) バックアップ実験として行う平成23年度の現況顕微鏡システムで同定したNETs誘導因子群と比較し,一致した因子を以下のマウス動物実験に用いることとする.(3) in vitro実験で同定されたNETs誘導因子は,マウス接種実験に備え,大量発現系および精製系の至適化を行う.そのために,初年度で購入した各種の組換えタンパク発現系を使用するほか,特異的抗血清を利用した精製用アフィニティーカラムも作製する.抗血清の完成には,3ヶ月程度の時間を要するため,その作製はNETs誘導因子の候補が同定され次第,逐次実施する.マウスモデルを用いたNETs免疫系作動因子の同定と感染防御効果の検索さらに,上記のin vitro実験系で同定したNETs誘導因子をマウス動物モデルに供し,in vivo実験下におけるNETs誘導の検索を行う.また,NETs誘導がマウスモデルで確認された場合は,院内感染の主要な起因菌として問題化しているMRSA(多剤耐性黄色ブドウ球菌)の感染実験を行う(担当:寺尾・川端・中田).
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