唾液腺由来高BDNF血症マウスによる抗うつ効果の行動学的・分子生物学的解明 1.唾液腺由来BDNF高血症マウスを用いて、うつ病モデルであるポーソルト強制水泳試験を行った。強制水泳試験において無動時間(うつ状態のマウスは長くなる)をコントロールマウスと比較したところ、無働時間が短い傾向が認められ、唾液腺由来BDNF高血症マウスは抗うつ傾向があることが示唆された。2.このマウスにおいてBDNFレセプターであるTrkBのリン酸化の状態を検討したところ、1で認めた抗うつ効果がTrkBの活性化によるものである可能性が示唆された。3.BDNFにおけるTrkBレセプターを介した抗うつ効果は、Akt/PKBのリン酸化後の神経保護作用と報告されていることから検討したところ、Akt/PKBのリン酸化に関しては今後の検討が必要であった。 うつ病患者における唾液BDNFと病勢との関連についての解明 ヒト唾液にはBDNFが含まれていることが報告されているが、うつ病患者の唾液BDNFの測定の報告は現在までにない。そこで、うつ病患者における唾液BDNF量を検討した(慶応大学との共同研究)。 1.インフォームドコンセントに基づき了解の得られた被験者は、米国精神医学会の基準により判定されたうつ病患者を選択し、咀嚼運動時の唾液採取を行い、うつ病の無いコントロールと比較した。また統合失調症、双極性障害も比較検討した。しかし、咀嚼運動では唾液BDNF量は、有意な増加を認めなかった。2.LC-MS/MS解析を行いBDNF総量および成熟型・未熟型の存在様式を検討したが、明らかな変化は認められなかった。
|