研究概要 |
平成23年度は癌性骨痛を効率的に再現できる動物実験モデルの作成を試みた。癌細胞として高頻度に骨転移を示すヒト乳がん細胞のMDA-MB-231、ラット肺がん細胞IP-B12を用いた。腫瘍の大きさを組織学的に検討し、さらに骨痛の評価をプランターテスト、グリップフォーステスト、Von Freyテストおよびインキャパシタンステストでタイムコースを取り腫瘍の大きさと痛みの相関関係を評価した。その結果、IP-B12細胞を脛骨内に接種された動物は、歩行障害や、荷重による疼痛からの逃避行動など、行動学的に骨痛の病態を示した。レントゲン検査では、いずれの動物モデルにおいても、ヒトの癌患者に類似した溶骨性病変が認められた。さらに、上記の疹痛評価方法によって客観的な骨痛評価方法も有効であることが示されたことから、再現性の高い動物実験モデルとしてIP-B12細胞を脛骨に直接摂取する癌性骨痛誘発モデルの確立に成功した。 この動物実験モデルを用いて骨痛の分子メカニズムを解明するためのアプローチとして、平成23年度は後根神経節(DRG)よりRNAを採取しマイクロアレイ解析による遺伝子プロファイリングを行った。IP-B12細胞を接種した側のDRG、および接種していない正常のDRGを採取し、通法にしたがってマイクロアレイ解析を行った結果、腫瘍接種により上昇する遺伝子として36遺伝子、減少する遺伝子として42遺伝子がクローニングされた。上昇した遺伝子群の中には痛みへの関与が報告されているP2rx7 (purinergic receptor P2X, ligand-gated ion channel, 7)が含まれており、本研究で行ったマイクロアレイ解析が有効であることを示している。
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