研究課題/領域番号 |
23390422
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
米田 俊之 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招へい教員 (80142313)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プロトン / 骨痛 |
研究概要 |
平成24年度はIn Vitroの実験系を用いて、後根神経節細胞(DRG細胞)においてプロトン刺激により発現が誘導される遺伝子の検索を行った。 ラットDRGを採取した後酵素処理を行い初代培養細胞を採取した。DRG細胞にpH5.5に調整した培養液で24時間処理した後RNAを回収し、通常の培養液(pH7.4)にて処理した細胞群をコントロールとしてマイクロアレイ解析を行った。その結果酸刺激により発現が上昇する遺伝子として691個の遺伝子を、発現が減少する遺伝子として1086個の遺伝子を同定した。発現上昇が見られた遺伝子の中には炎症性疼痛に関与するCGRPならびにCOX-2も含まれており、DRG細胞と酸性培養液を用いた実験系が問題なく機能していることが示唆された。これら遺伝子はプロトン受容体であるTRPV1受容体を介して発現制御が行われている可能性が推察されることから、平成25年度は、TRPV1により活性化されるカルシウム依存性細胞内シグナルとの関連性について検討を進めていく。 さらに我々は、プロトンにより発現誘導される遺伝子のなかから腫瘍依存性の骨痛に関与する遺伝子を絞り込むために平成23年度のマイクロアレイ結果と遺伝子発現比較を行った結果、15個の遺伝子がプロトンによる腫瘍性骨痛の発生に関与する遺伝子として見出した。15個の遺伝子の中にはMMP13,Ip6k2およびCyl61などが含まれている。これら遺伝子は腫瘍が産生するプロトンによりDRG細胞で発現誘導され、骨痛発現に関与している可能性が推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、In Vitroで酸性環境を再現しDRG細胞で遺伝子発現プロファイリングを行うことが出来た。後根神経節からの初代培養DRG細胞の採取と培養は技術的に難しく、マイクロアレイ解析に必要な十分量の細胞とRNAをいかに回収するかが、研究計画を進めるうえでの最も重要なポイントであった。しかし、DRG細胞の回収に成功し、なおかつマイクロアレイ解析を行えたことは、研究がおおむね順調に進展していると評価できると考えられる。さらに、マイクロアレイ解析においては疼痛に関与することが明らかとなっている既知の遺伝子が多く含まれていたことから、マイクロアレイ解析結果の信用性も高い。平成24年度のマイクロアレイ結果と、平成23年度のラット骨転移モデルを用いたマイクロアレイ解析結果を融合し、プロトンにより骨痛発現に関与すると推察される遺伝子クローニングも終えている。これらの研究結果は平成25年度の研究を進展させるうえで有用な研究基盤となりえることから、最終的にはプロトンによる骨痛発生メカニズムの解明が可能になると考えられる。 以上より、本研究は現在までおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度までにクローニングされた遺伝子の役割と発現制御メカニズムを中心に研究を推進していく まず、骨転移動物実験モデルよりDRGを採取し、MMP13,Ip6k2およびCyl61の発現を免疫組織学的に検討する。その際ポジティブコントロールとしてCFAを足に接種する炎症性疼痛モデルを用いる。DRGでの発現を骨転移の初期と骨破壊時期のステージに分類し、DRGにおける発現パターンを検討する。 発現制御メカニズムとしてはプロトンの受容体であるTRPV1に着目する。酸刺激により遺伝子発現の検討をsiRNAによりTRPV1遺伝子をノックダウンした細胞で検討する。さらにTRPV1を安定発現させたDRG細胞株F11-Trpv1を用いて、遺伝子発現制御を検討する。TRPV1の下流シグナルとしてはCaMK-CREBカスケードに着目し、ドミナントネガティブ型CREBの過剰発現やsiRNAによるCREB遺伝子のノックダウンの効果を検討する。さらには、クローニングされた遺伝子のプロモーター領域にCREBのコンセンサス結合配列が存在するか否かをデータベース検索し、存在する場合はその役割をDNAプルダウンアッセイ、ChIPアッセイおよびルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイにより検討する。
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