研究課題
平成25年度は、前年度までに行った酸性環境で誘導される遺伝子の発現および機能制御メカニズムの解明を行った。酸により誘導される骨痛の発現においては、脊髄神経支配領域の1次求心性神経の細胞体である脊髄後根神経節(dorsal root ganglion)の侵害受容線維における酸性刺激の受容が重要である。そこで、ラット後根神経節より後根神経細胞を分離、培養し、乳酸により酸性に調整した培養液を用いて酸刺激を行った。コントロール群の細胞および酸性刺激群の遺伝子発現プロファイリングを行った結果、後根神経細胞において酸性刺激によって発現誘導される遺伝子を複数クローニングすることに成功した。クローニングされた遺伝子の中には痛み関連ペプチドの一つであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が含まれていた。Gene Ontology Biological Processによる絞り込みの結果、synaptic transmissionに分類される遺伝子が1つ、neurotransmitter secretionに分類される遺伝子が2つ含まれていた。これら遺伝子の中には、シナプス小胞を介した神経伝達物質の放出に関与するSynapsin2およびSnap25が含まれていた。次に、酸刺激によるこれら遺伝子の発現誘導メカニズムの検討を行った。ヒト、マウスおよびラットのSnap25遺伝子プロモーター領域を検索したところ、CRE配列が高度に保存されていることを見出した。酸刺激はTRPV1を活性化しCREBシグナルを活性化することから、酸刺激はCREBを介してSnap25の発現を制御している可能性が明らかとなった。以上の結果より、酸性刺激は脊髄後根神経節細胞において、CGRPの発現誘導ならびに神経伝達物質の放出を担う遺伝子発現を増加させることにより、骨痛誘発に関与している可能性が示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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