研究課題
自然免疫システムは微生物感染に対する防御機構であり、Toll-likereceptors(TLRs)とよばれる一群の受容体が微生物の構成成分を認識し、免疫応答を惹起する役割を担っている。このシステムは微生物感染を原因とする歯周病に伴う骨破壊にも深く関与することが示唆されているが、約10種類存在するTLRsがそれぞれどのような機能をもつかは不明である。本研究では、TLRsを中心とした自然免疫システムが骨代謝において担う役割について明らかにするため、生体・細胞・分子レベルでそれぞれのTLRsの機能解析をおこない、その結果に基づいて炎症性骨破壊の原因究明や、その治療方法の開発および骨再生への応用を検討する。2011年度は、TLR3のリガンドであるPoly(I:C)が骨代謝に与える影響と、その分子メカニズムについて検討した。Poly(I:C)を骨粗鬆症モデルマウスに投与したところ、破骨細胞が減少し、骨密度が有意に上昇した。Poly(I:C)は破骨前駆細胞に破骨細胞の分化抑制因子であるインターフェロンβの産生を促した。この因子がインターフェロン受容体とその下流にあるSTAT1という転写因子を介して破骨細胞分化を抑制していることが明らかとなった。これらの結果は、骨粗鬆症の新しい治療方法として自然免疫システムが有用であることを示唆する。
2: おおむね順調に進展している
予定通り、TLR3がもつ骨密度上昇作用の分子メカニズムの解明に成功したから。
TLR3が癌の骨転移に対して抑制作用を示すか否か検討するとともに、TLR8が破骨細胞分化に与える作用を解析する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件)
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