研究課題
歯性病巣感染症の中で重篤な症状となる感染性心内膜炎、心臓弁膜症、冠動脈疾患などの心臓・血管疾患の病態は未だ不明である。今年度も24年度、25年度の研究実績を基に1)Aggregatibacter actinomycetemcomitansの表層蛋白のenolaseのリコンビナント蛋白発現系の確立、2)歯周局所のmicro-inflammationの全身健康へ及ぼす影響について研究を進め、研究成果の一部については国内外の学会にて報告した。今年度は心臓・血管疾患の密接に関連するHACEK群細菌種の中で特に珍しいCardiobacterium valvarumを術後弓部大動脈グラフト感染症から見出した。本菌はHACEK groupに属し、2004年に初めて報告された後、これまで世界的に10例の報告があるのみであった。患者は6年前に胸部大動脈瘤に対して弓部大動脈置換術を施行、術直後より中等度の大動脈弁逆流症、歯肉増殖症を認め、3年ほど前には抜歯に伴う歯肉炎に対する治療歴を有する53歳男性。持続する全身倦怠感、食欲不振、体重減少および夜間盗汗を主訴に来院した。受診時、著明な歯肉増殖があり、感染性心内膜炎が疑われ、CT、PET-CTにて弓部大動脈のグラフト周囲に炎症所見を認め、血液培養(増殖が遅く約60時間培養した)からグラム陰性桿菌を認めた。自動同定機器での菌種同定には至らず、最終的に細菌16S rRNA解析によりようやくC. valvarumと同定できた。本菌はおもに感染性心内膜炎を起こすが、症状に乏しく潜行性に進行するため診断時には巨大疣贅を形成していることが多く、弁置換術を要する症例が多い。患者は3年ほど前には抜歯に伴う歯肉炎に対する治療歴を有しており、口腔疾患との関わりが疑われたが、本菌の感染経路や心臓・血管疾患への病原性などの解明には至らず、今後の課題となった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Internal Medicine
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