研究概要 |
本年度は,タンパク徐放のキャリアとなるハイドロゲル粒子を試作し,まずモデルタンパクとしてのBovine serumal bumin (BSA)を用いて検討を行うことにより,有望な組成物を得ることに成功した。そして,得られたゲル粒子にFGF-2を担持させ,水中環境下でFGF-2の持続的な徐放が可能であることを確認した。 1.タンパク担持用ハイドロゲルの作製 HEMA単独の重合体を粉砕して得た粒子では,吸水により凝集が生じたため,HEMAに架橋モノマーを10%加えた重合体を作製した結果,吸水しても粒の形態を維持できる粒子の作製に成功した。つづいて,HEMA90%/架橋モノマー10%からなる粒径の異なる4種の粒子を調製し,吸水率・含水率を測定したところ,4種の間に差は認められず,いずれもハイドロゲルとして十分な吸水性を備えていることが分かった。また,ゲル内に残留した未重合モノマーを減少させるためには,粉砕後に48時間の洗浄が必要であることが判明した。さらに,その条件で洗浄したゲル粒子には骨芽細胞様細胞が吸着できることから,細胞親和性に問題がないことが確認された。 2.試作ハイドロゲル粒子のタンパク担持・徐放性の検討 粒径550μmのハイドロゲル粒子をBSA溶液に浸漬した後,9日間までの溶出実験を行ったところ,BSAの持続的な溶出が認められた。 つづいて,4種のFGF-2試薬と1種の市販FGF-2製剤について,骨芽細胞様細胞の増殖と分化の点から効果を比較したところ,有効濃度には差が認められなかったため,市販製剤であるFGF-2を担持させたハイドロゲル粒子を作製した。この試作粒子を用いて溶出試験を行った結果,BSAの場合と同様に9日までの持続的なFGF-2の溶出が可能であることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に歯科用レジンへの応用に適していると予想されるハイドロゲル粒子の作製とFGF-2の担持に成功したため,細胞培養実験にてFGF-2を担持させたゲル粒子の効果の確認を行うとともに,長期的なFGF-2徐放特性について検討していく予定である。また,ゲルを適用する基材となる4-MET[A/MMA系接着性レジンの試作品を調製し,その材料特性を調べ,ゲル粒子の適用方法を考慮するために必要なデータを取得していく計画である。なお,に材となる4-MET[A/MMA系接着性レジンについても試作となるため,その組成の確定にはある程度の時間を要する可能性があり,工学研究科所属の連携研究者と十分な討議を重ねる予定である。
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