研究課題/領域番号 |
23390435
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
松尾 敬志 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30173800)
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研究分担者 |
中西 正 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (00217770)
菅 俊行 徳島大学, 大学病院, 講師 (60243713)
湯本 浩通 徳島大学, 大学病院, 講師 (60284303)
平尾 功治 徳島大学, 大学病院, 助教 (00581399)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 齲蝕 / 歯髄炎 / ミニマルインターベンション(MI) / フッ化ジアミンシリケート / 電磁波/高周波 / ポリフェノール |
研究概要 |
電磁波/高周波の効果について、口腔内細菌に対する電磁波/高周波の殺菌効果および不活性化について検討した。グラム陰性細菌としてP. gingivalis、グラム陽性細菌としてS. mutans, S. intermedius, E. fecalisを用い、周波数500〜1000kHz, 1秒間の照射を5〜15回行った。その結果、電磁波/高周波は全ての細菌に対し殺菌効果を示し、またその効果は照射回数に比例して高まった。形態学的な観察では、照射により細菌の外形が崩れていた。さらに、S. mutansの持つヒト単球からの炎症性サイトカイン誘導作用は、電磁波/高周波照射により不活性化された。また、P. gingivalisの病原性酵素であるジンジパインも不活性化された。これらの成果はApplied Microbiology誌 (113巻, 2012)に掲載された。 アンモニウムヘキサフルオロシリケート(SiF)による歯質石灰化効果については、これによるハイドロキシアパタイト粉末の結晶性向上、およびエナメル質構造への効果を検討した。ハイドロキシアパタイト粉末にSiF溶液を作用させ、その結晶性の変化をX線回折(XRD)にて解析した。その結果、XRDのアパタイト粉末の結晶性を示すピークは鋭くなり、その結晶性の向上を示した。また、アパタイト粉末中のフッ化カルシウム量も濃度依存的に増加した。さらに、酸エッチングされたエナメル質にSiF溶液を作用させSEMで観察したところ、脱灰された表面のエナメル小柱はフッ化カルシウムが沈着し、修復された像が認められた。この結果はAmerican Journal of Dentistry誌(25巻, 2012)に掲載された。また、これらの成果は日本歯内療法雑誌(印刷中)および歯科評論(印刷中)で発表される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミニマルインターベンションの概念と齲蝕病態に基づく新規の治療法の開発に向けて、次の5つのテーマを設定している。①象牙細管侵入細菌に対する電磁波/高周波の効果 ②フッ化ジアミンシリケート(アンモニウムヘキサフルオロシリケート)による歯質石灰化効果 ③初期歯髄炎に対するポリフェノールおよび電磁波/高周波の効果 ④齲蝕象牙質封鎖法(sealed treatment of caries)の有効性 ⑤臨床応用に向けての動物モデルの確立。 ①と③の電磁波/高周波の効果については、口腔内細菌に対する電磁波/高周波の殺菌効果および不活性化について検討した。これらの成果はApplied Microbiology誌 (113巻, 2012)に掲載された。 ②のフッ化ジアミンシリケートによる歯質石灰化効果については、アンモニウムヘキサフルオロシリケートによるハイドロキシアパタイト粉末の結晶性向上、およびエナメル質構造への効果を検討した。この結果はAmerican Journal of Dentistry誌(25巻, 2012)に掲載された。 ③の初期歯髄炎に対するポリフェノールの効果については、紅茶ポリフェノールがTh1細胞のリクルートに関わるケモカインCXCL10の産生を抑制すること(International Immunopharmacology誌, 11巻, 2011)、また、歯髄炎初期に重要な働きをすると考えられている歯髄の自然免疫系を解析した(論文投稿準備中)。 ④齲蝕象牙質封鎖法については、上記のようにフッ化ジアミンシリケートによる封鎖法が確立されており、齲蝕病巣への応用の段階に入っている。なお、⑤臨床応用に向けての動物モデルの作成は、これからの課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
ミニマルインターベンションの概念と齲蝕病態に基づく新規の治療法の開発に向けて、①象牙細管侵入細菌に対する電磁波/高周波の効果 ②フッ化ジアミンシリケートによる歯質石灰化効果 ③初期歯髄炎に対するポリフェノールおよび電磁波/高周波の効果 ④齲蝕象牙質封鎖法(sealed treatment of caries)の有効性 ⑤臨床応用に向けての動物モデルの確立、をテーマに挙げて研究を行ってきた。 ①の象牙細管侵入細菌に対する電磁波/高周波の効果については、in vitroで殺菌作用および不活化作用が確認された。今後、抜去歯を用いた実際の齲蝕病巣での効果を検討する予定である。また、②のフッ化ジアミンシリケートによる歯質石灰化効果については、同効果のみならず象牙細管封鎖効果、歯質強化も示され、さらに消毒薬添加による齲蝕細菌への効果も示された。今後、抜去歯を用いた実際の齲蝕病巣での効果を検討する予定である。③の初期歯髄炎に対するポリフェノールおよび電磁波/高周波の効果については、電磁波/高周波が線維芽細胞に与える影響を検討する予定である。さらに、茶ポリフェノールであるカテキンに注目し、歯髄の免疫系に対する効果を検討する予定である。④の象牙質封鎖法は、①および②の成果を踏まえ、齲蝕抜去歯を用いて検討する予定である。さらに、これらを進めて⑤の臨床応用に向けての動物モデル系を確立したい。
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