研究概要 |
感染根管治療後の治癒傾向において根管を通して根尖孔外の歯周組織に暴露される感染物質をコントロールすることが重要となる。歯髄細胞も含め、歯周組織に存在している細胞は幹細胞に近い特徴を持つものが多く、いづれも硬組織の形成を誘導する。根管内無菌性獲得の困難さや不完全根管充填によって、根尖性歯周炎が発症し感染根管治療に移行することが多い。抜髄後の場合には、根尖孔付近に存在している歯根膜組織中の未分化間葉系幹細胞の分化によってセメント質誘導は効果的に促進できる可能性がある。セメント質封鎖誘導は、生体親和性とセメント芽細胞遊走亢進およびセメント質分化誘導能を有する成長因子、基剤を利用し、根尖最狭窄部を意図的に封鎖後、セメント質被覆による根尖部封鎖を確立させる。本研究は生体親和性とセメント芽細胞分化誘導能を有する新しい根管充填材(剤)を開発し、根尖最狭窄部にセメント質による理想的根尖封鎖を意図的に誘導した歯内療法を確立し、臨床応用することを目的とした。平成24年度においては、セメント芽細胞の分化誘導材(剤)に対する多面的解析を行い、セメント質分化誘導能を有する根管充填材(剤)を決定することを目標に研究を進めた。新たにヒトセメント芽細胞、歯髄細胞および象牙芽細胞の遊走試験、分化試験、細胞傷害性試験を行い、分化試験では、細胞増殖、アルカリフォスファターゼ活性、RT-PCRによる石灰化関連マーカー(bone sialoprotein (BSP), osteocalcin (OCN), osteopontin (OPN), Runt realeated transcription factor-2 (Runx2), Collagen 1)のmRNA発現において、再度精査した。さらに、セメント芽細胞分化誘導材(剤)の開発においては、申請者らの過去の研究(J Endod. 33:836-9, 2007)に基づき、セメント芽細胞および、歯根膜細胞、歯髄細胞も用いて検証した。
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