研究概要 |
本研究の目的は,「長寿の人は,口腔機能が維持されているのか?],「歯がよい人は,健康で長生きなのか?」,すなわち口腔機能と健康長寿との関係を,超高齢者を対象にして明らかにすることである-得られた地域高齢者のデータをにに,長寿者の口腔機能の実態を明らかにする・また被験者全員の認知・運動機能,臓器の生理機能などによる心身の老化度を評価し,口腔機能と精神的・身体的老化度との関係を,多変量解析を用いて明らかにする・さらに今後口腔機能と健康長寿の因果関係を解明するため,コホート研究のデータベースを構築する. これまでに,70歳の被験者1000名の調査とデータ分析を終了した. 口腔機能と全身の運動機能に関しては,最大咬合力,握力,座位でのステッピング回数,タンデムバランスに関しては,Eichner分類各群間で有意差がみられた,また,Eichner分類が同一の場合,70歳と比較して80歳の方がそれらの運動機能は低く,有意差がみられた.以上のことから,口腔機能の指標である最大咬合力は,歯の喪失によって低下するのみならず,加齢によって,全身の運動機能と同様に低下することが示唆された. 性格傾向が高齢者の口腔関連QOLに与える影響について,2変量の分析において,口腔関連QOLは歯数,最大咬合力,神経症傾向(rs=-0.21),外向性(rs=0.18),親密性(rs=0.13),誠実性(rs=0.17)と有意な相関を示した.口腔関連QOLスコアを従属変数とした重回帰分析において,基本属性を調整したうえで,神経症傾向,外向性は,歯数,咬合力に次いで有意な独立変数であった.すなわち,歯数が少なく,最大咬合力が小さく,神経症傾向が強く,外向性が弱いほど口腔関連QOLが低いという結果となった.逆に,口腔機能は良好だが口腔関連QOLが低い人は性格傾向に特徴があることが示唆された.
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