研究課題
目的:近年、口腔機能と認知症との関連が報告されているが、その因果関係は明らかではない。我々は、口腔機能が認知機能低下に影響するとの仮説に基づき、認知機能低下の早期過程においても口腔機能が関連するのではないかと考えた。本研究では、とくに、高次生活機能の低下していない高齢者を対象に、認知症発症の前段階である軽度の認知機能低下と口腔機能との関連を検討した。方法:対象者は、70歳および80歳の地域高齢者1664人とした。高次生活機能の指標として老研式活動能力指標を用い、13項目すべての活動が可能であると回答した者のみを高次生活機能非低下群とした。口腔内の状態について、歯数、咬合力、唾液量を計測した。認知機能検査として、軽度認知機能低下の指標である日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)を用いた。その他、教育年数、経済状況、外出頻度および心疾患、脳卒中、高血圧、高脂血症、慢性腎疾患の既往についても問診を行った。また、全身運動機能の代表値として握力を測定した。統計学的分析として、高次生活機能低下群・非低下群においてそれぞれ目的変数をMoCA-Jスコアとした重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。結果:対象者のうち高次生活機能非低下群は48%であった。重回帰分析の結果、低下群、非低下群ともに、他の因子を調整したうえでも、年齢、性別、教育年数、握力に加えて、咬合力は認知機能と有意な関連を認めた。とくに、高次生活機能非低下群における本研究の結果は、口腔機能低下から認知機能低下への関連を示唆する新たな知見と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
被験者も順調に集まり,各検査も問題なく,他分野との連携も良好である.
これまで通り進め,被験者数を増やし,分析と総合評価を行う.
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