研究課題
目的:最大咬合力の低下による栄養摂取の変化が,歩行の速さの低下に関連するという仮説を立て,横断研究の結果から統計学的検証を行った.方法:分析の対象者は,自立した生活を送っている69-71歳736名と79-81歳717名とした.まず,必要な人は義歯を装着した状態で,最大咬合力を測定した.栄養摂取の評価には簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用い,タンパク質摂取を算出した.また,筋力の指標として握力,下肢の運動機能として歩行の速さを測定した.統計的分析は,歩行の速さ(サルコぺニアの診断基準の1つである0.8m/s以下=0, それより速い=1)を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.独立変数は,年齢,性別,握力,最大咬合力,タンパク質摂取とした.オッズ比算出のための単位は,各測定値の四分位偏差とした.統計学的有意水準は5%とした.結果:歩行の速さが0.8m/s以下の者の割合は27.4%(70歳群:22.8%, 80歳群:32.1%)であった.まず,ロジスティック回帰分析の結果,歩行の速さに対して,握力とともに,最大咬合力(オッズ比:OR=1.17, 95%信頼区間:1.07-1.28, p=0.001)とタンパク質摂取(OR=1.13, 95%信頼区間:1.04-1.22, p=0.002)は,有意な独立変数であった.したがって,咬合力を維持・回復することによって食事中のタンパク質摂取を維持・増加し,歩行機能の低下,さらにはサルコペニアを予防できる可能性があると考えられた.結論:最大咬合力が,歩行の速さと関連し,そのメカニズムの1つとして,タンパク質摂取を媒介することが体系的に示された.
2: おおむね順調に進展している
被験者数も当初の計画通りであり,分析も順調に進んでいる.
計画通り,フォローアップ調査を進める.
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J Dent
巻: 42 ページ: 556-564
10.1016/j.jdent.2014.02.015. Epub 2014 Feb 28.