研究課題/領域番号 |
23390452
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 正博 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10243247)
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研究分担者 |
竹立 匡秀 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60452447)
村上 伸也 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70239490)
山下 元三 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (90524984)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | FGF-2 / 歯周組織 / 再生療法 |
研究概要 |
1、FGF-2を用いた歯周組織再生療法(早期第II相臨床試験)の予後の生存時間解析を行った結果、0.3%FGF-2投与が歯周病の再発等による生じるイベント発生とその発生までの期間を延長させることが示された。また、臨床試験後8年以上の観察期間に悪性腫瘍や歯肉の異常増殖などの発生例は認められず、FGF-2投与に関する安全性に関する問題も認めなかった。 2、ビーグル犬の上顎両側犬歯に人工的に歯周組織裂開状欠損モデル(近遠心径3mm、歯軸方向径5mm)を作成し、欠試験側には0.3%FGF-2含有HPC(ハイドロキシプロピルセルロース)製剤を、対照側にはHPC製剤を投与する。そして、両部位の治癒状態を経時的に観察するとともに、欠損作製から6週間後にと殺し被験部の組織学的検索とマイクロCTによる骨組織の評価を行った。その結果、FGF-2投与群で有意な歯槽骨再生が認められたが、FGF-2投与による歯根膜およびセメント質の再生効果は明確に確認できなった。 3、ビーグル犬の下顎第1後臼歯の近心頬側部に2壁性歯周組織欠損モデル(近遠心径5mm、頬舌径3mm、歯軸方向径4mm)を作製し、試験側には脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)含有フィブリンゲルを、対照側にはフィブリンゲルを投与し、両部位の歯周組織再生状態を軟X線およびマイクロCTで比較した。その結果、フィブリンゲル単独投与群に比べ有意に多い歯周組織再生がADSC投与群において認められた。 4、マウス歯根膜細胞(MPDL22)におけるBMP-2誘導石灰化過程へのFGF-2の作用を解析した。その結果、BMP-2により誘導されるMPDL22の石灰化誘導は、FGF-2がMAPKを介してBMP-2シグナルのSmad1リンカー部位をリン酸化しすることにより抑制されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に予定した以下の本年度の研究計画を、概ね計画通り遂行できた。 1、FGF-2を用いた歯周組織再生療法(早期第II相臨床試験)の長期予後の生存時間解析に関しては、計画通り遂行し、成果の論文発表(日本歯周病学会会誌、第54巻1号、38-45、2012)を行った。 2、ビーグル犬歯周組織裂開状欠損モデルを用いたFGF-2の歯周組織再生効果の検討に関しては、本モデルにおいて、FGF-2が歯槽骨再生能を有することは確認されたが、FGF-2の歯根膜およびセメント質の再生効果は明確にならなかった。この点に関して、本年度に作製した裂開状欠損モデルの一部において既存のセメント質の残存が確認されていることから、次年度に再試験を実施する予定である。 3、ビーグル犬2壁性歯周組織欠損モデルを用いたADSC の歯周組織再生効果の検討に関しては、計画通り遂行した。 4、マウス歯根膜細胞(MPDL22)におけるBMP-2誘導石灰化過程へのFGF-2の作用の解析に関しては、計画通り遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画を概ね予定通り遂行できたことから、次年度は概ね当初の研究計画に従い以下の解析を予定している。 ①ビーグル犬歯周組織裂開状欠損モデルを用いたFGF-2の歯周組織再生効果の再検討、②脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)とFGF-2併用時の歯周組織再生効果の検討、③FGF-2の血管内皮細胞の管腔形成能に及ぼす効果の検討、④歯根膜細胞におけるFGF-2刺激による歯周組織再生関連シグナル伝達機構のクロストーク解析 なお、「1、ビーグル犬歯周組織裂開状欠損モデルを用いたFGF-2の歯周組織再生効果の検討」に関しては、本年度に結果を不明確であったため、実験手技の再確認を行い再検討する予定である。
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