研究概要 |
良好な機械的強度と形状保持性,成形性を有する3次元チタンファイバー焼結体への骨特異的な機能性タンパク質の固定化を試みた.固定化にはトレシルクロリド法を用いた.ファイバー径50μm,気孔率87%のディスク状3次元チタンファイバー焼結体にトレシルクロリドを塗布し,37℃で2日間反応させた,水洗乾燥後,フィブロネクチン水溶液にトレシル化チタンファイバーを浸漬し,37℃で1日間反応させた.反応後,ラマン分光分析にてフィブロネクチン固定化の様相について検討したところ,タンパク質に特徴的なアミド基のピークが観測され,フィブロネクチンが固定化されたことが判明した. また,機能性タンパク質とチタンとの反応を調べる基礎的な実験として,水晶発振子マイクロバランス(QCM)法による解析を行った.27MHz QCMを用いて,機能性タンパク質であるフィブロネクチンとコラーゲンおよびアルブミンのチタンに対する吸着挙動の解析を行った.その結果,コラーゲンが最も吸着量が多く,次にフィブロネクチン,アルブミンの順となった.さらに,トレシル化チタンとフィブロネクチンとの反応を解析したところ,初期の吸着量は少ないものも,機能性タンパク質とのカップリング反応の進行に伴ってフィブロネクチンの吸着量,すなわちチタンに固定化されるフィブロネクチン量が時間と共に増加することが分かった. タンパク質固定化の生物学的な効果を検討するために,フィブロネクチン固定化チタン上での骨芽細胞様細胞の付着,増殖について検討した.その結果,フィブロネクチンの固定化は細胞の伸展状態の制御に影響することが判明した.
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今後の研究の推進方策 |
BMPやフィブロネクチンなどの機能性タンパク質を固定化したチタンファイバーをウサギの下顎欠損部に埋入して,ファイバー内部や周囲での骨形成状態について,病理組織学的に検討する.当初はALP,オステオポンチンなどの機能性タンパク質の効果についての検討も予定していたが,機能性タンパク質がかなり高価であり,実用化を考慮して,より経済的で生物学的効果の期待できるフィブロネクチンやコラーゲンなどの機能性タンパク質を中心に実験を進めていく.
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