研究課題/領域番号 |
23390455
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
福島 忠男 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (80084250)
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研究分担者 |
川口 稔 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (10122780)
大野 純 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (10152208)
土井 豊 朝日大学, 歯学部, 教授 (40116067)
早川 徹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (40172994)
岡畑 惠雄 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (80038017)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | DNA / プロタミン / スキャフォ-ルド / 複合体 / インジェクション型 / 骨再生 / サイトカイン / 人工脂質 |
研究概要 |
DNA(300base-pair)/プロタミン(DP)複合体は水練和よりペーストになるので他の材料との複合化が容易となる.そこで,炭酸アパタイト(Cap)を添加した複合体ペーストを作製し,ラット頭蓋骨欠損部埋入実験より骨形成能を調査した.Capの添加より操作性は悪くなるが,骨形成は良好であった.当初,骨再生にはリン酸カルシウム系無機物の添加が必要不可欠と考えていた.しかし,当年度の実験により新生骨形成量はDNA/プロタミン複合体ペースト単独使用の方が優れていることが新たに判明した.そこで,頭蓋骨ペースト埋入部位の組織と骨膜からアウトグロスさせた細胞を用いて,骨形成関連遺伝子発現の違いをPCR法より比較した.その結果,培養期間(3日~21日)によって異なるが,遺伝子発現は全体的にペースト埋入部位組織の方が高かった.特に.OSX,ALP, OPG, Collagen Iが高く,破骨細胞形成抑制因子OPGの発現を注目している.DP複合体ペーストの骨形成能は優れた骨誘導性と骨再生に適した生体分解速度を有しているからである.すなわち,骨生成できるスペースの確保も重要なであることを示唆している.そこで,DNA分子量(7000base-pairと超高分子Original)のことなるDP複合体を合成し,細胞毒性,軟組織反応性,骨形成能などin vitro, in vivo実験を行ってDNA分子量が複合体の性質に与える影響を検討した.その結果,分子量の影響を大きく受けたのは生体内分解速度と骨形成速度で,分子量が大きくなると生体内分解速度と骨形成速度とも大きく減少した.また,FGF-2を添加した300base-pairDP複合体の骨形成能も加齢ラット(30~40週齢)にて調査した.FGF-2の添加より初期の骨形成に有効であることがμCT画像分析,脱灰組織(HE染色)観察などで判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,本研究の基材となるDNA(300base-pair)/プロタミン(DP)複合体ペーストが期待以上に優れた新生骨再生能を有していることが遺伝子発現レベル,動物実験で明らかとなったことである.すなわち,ペースト埋入部位組織と骨膜からアウトグロスさせた細胞を培養し,その細胞を用いて骨関連遺伝子(OSX, OPN, CBFA-1,ALP, OCN, Collagen, OPG)の発現の違いを検討したところ,骨膜由来細胞より骨関連遺伝子の発現が大きかった.DP複合体埋入部位近傍に埋入初期にて構築される組織は,骨膜様組織であると提唱してきたがそれを証明する根拠となっている.さらに,試料埋入3ヶ月にはほぼ骨欠損部は新生骨にて再生されていることもμCT画像分析,脱灰組織(HE染色)観察および画像処理定量分析などより明らかにできた.また,DNA/プロタミン複合体の骨形成速度の調製がDNA分子量の調整により可能であることやFGF-2の添加によりさらに骨形成が促進できることを証明したことも評価できる.さらに,3編の論文投稿と7件の学会発表ができたことはおおむね研究は順調に進展していると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
DNA(300base-pair)/プロタミン複合体の最大の特徴は自己ペーストになることである.その機能を最大限生かして新規インジェクション型骨補填材の開発研究を行う.すなわち,ペーストであるので他の素材との混合が容易である.したがって,複合体自体にも骨誘導性があるが,FGF-2を添加すると骨誘導性は高まる.しかし,FGF-2の効果は初期の段階における骨誘導性に限定されている.従って,長期期間有効性が持続できるように改善しなければならない.そこで,サイトカインを人工脂質で修飾する方法,すなわちFGF-2を脂質被覆し保護すれば,脂質が外れるまで一定期間不活性化が可能となる.従って,FGF-2と脂質被覆FGF-2を混在させれば効果は持続する.その効果を小動物実験より,μCT画像分析,脱灰組織(HE染色)観察および画像処理定量分析にて検証する.さらに,試料埋入組織よりアウトグロスさせた細胞を利用して,Real-timePCR法から遺伝子レベルでその効果も検討する.なお,分子量の異なるDNA/プロタミン複合体についても同様の実験を行う.また,最も骨形成が優れていた 試作インジェクション型骨補填材の骨形成能を大型動物(ビーグル犬)にて検証する.
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