研究概要 |
1)薬剤抵抗性と幹細胞性の関連解析:がん幹細胞は薬剤抵抗性をもつことはよく知られている.腫瘍血管内皮細胞には幹細胞性(CD90, Sca-1などの幹細胞マーカーの発現)や薬剤抵抗関連遺伝子,MDR1の発現が高いことがわかった.また,腫瘍培養上清により正常血管内皮においてこのトランスポーター遺伝子MDR1の発現が上昇したことから,腫瘍血管内皮細胞の薬剤抵抗性と幹細胞性との関わりについてCD90, Sca-1, CD133,MDR1発現と薬剤感受性の違いとの関係をreal time PCR,MTS assay, フローサイトメトリーによるSP分画解析などにより解析した.さらにALDHが高い腫瘍血管内皮細胞の存在をみいだし,それらが薬剤耐性をもっていることを明らかにした.また,幹細胞性をもつ腫瘍血管内皮細胞においてある細胞成長因子のシグナル経路が亢進していることなどを現在解析中である. 2)培養上清中サイトカインの解析:腫瘍培養上清により正常血管内皮における腫瘍血管内皮マーカーの発現亢進や薬剤耐性に影響を及ぼすサイトカインの解析をおこなった.悪性度の異なるがん細胞の培養上清による処理後, 細胞の抗がん剤や血管新生阻害剤への感受性の変化を増殖能, 遊走能への影響を通して比較検討した. 培養上清中のVEGFが血管内皮の薬剤耐性を亢進させることをみいだした.血管内皮においてこの受容体の阻害を行うことで薬剤耐性を回避できることを確認した.その他の培養上清中のサイトカインもいくつか見出され,現在解析中である.
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