研究課題/領域番号 |
23390469
|
研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
本田 一文 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10260936)
|
研究分担者 |
下重 美紀 長崎大学, 医学部, 准教授 (00392340)
八木原 一博 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), その他部局等, 研究員 (00538126)
平岡 伸介 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (40276217)
出雲 俊之 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 准教授 (80322709)
森 泰昌 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (00296708)
関根 茂樹 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10321879)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 組織マイクロアレイ / 抗体ライブラリー / キノームプロファイル / 抗体基盤プロテオミクス |
研究概要 |
舌がん60例強の組織マイクロアレイを作成した。特に舌がんの組織マイクロアレイと430抗体のキナーゼ抗体ライブラリーを用いて蛍光免疫染色を行った。すべての蛍光免疫染色画像はデジタル病理イメージに変換し、共同研究者らが同時に閲覧できる画像ライブラリーを構築した。 この画像ライブラリーを、国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野が開発中の画像処理ソフトを利用して、キナーゼタンパク質の網羅的定量的発現プロファイルを取得した。 上記プロファイルのバイオインフォマティクス解析から、患者生命予後と相関するキナーゼを3個抽出した。そのうち一つは、現在まで口腔がんでは報告されていない膜型チロシンキナーゼで、強発現症例は、非発現症例に比較して全生存期間が短いことを見出した。 また、臨床病期I/II期の早期舌がん原発巣切除症例のみの検討で、後発頸部リンパ節転移症例に高発現するキナーゼを見出した。キナーゼは、がん治療の分子標的として最も注目されている。現在、分子標的としての有用性を検証している。 キナーゼ抗体だけにとどまらず、当分野が所有する酵素や細胞骨格、がん関連タンパク質等を網羅する抗体ライブラリーによる免疫組織化学解析を行い、早期舌がんの後発頸部リンパ節転移を予測するバイオマーカーを見いだした。本分子は、19番染色体長腕に位置する遺伝子で、舌がん組織でFISH法を用いて遺伝子コピー数の検討を行ったところ、早期舌がん症例からでも遺伝子コピー数の増加を見出した。後発リンパ節予測は、手術法の適応や術後化学療法の選択に重要である。本バイオマーカーの発見は、実臨床の個別化医療に大きく貢献すると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究目標通り①キノーム発現プロファイルから標的分子を同定すること、②FISHプローブを用いてゲノムコピー数等を確認し、遺伝子異常を確認することの2点は終了し、分子標的候補の同定に成功している。さらに、FISH法を用いた試験と免疫染色にて、早期舌がんの後発頸部リンパ節転移を予測するバイオマーカーの抽出にも成功している。 分子標的候補の一部には、スクリーニングで使用したものとは別の抗体作成を作製し、特異性の検証を行っている。口腔がん細胞株を準備し、分子標的候補の機能解析を開始した。さらに、抗体医薬品として利用できるかどうかを確認する目的で、見出された標的候補の一部に対して、抑制機能を持つ新しい抗体の樹立とスクリーニングを開始した。
|
今後の研究の推進方策 |
キナーゼ抗体ライブラリースクリーニングは順調に進んでいる。臨床情報と相関するがん悪性化のドライバーをさらに同定するために、キノーム発現プロファイルをバイオインフォマティクスを用いて再抽出を試みる。キナーゼだけに特化せず、ドラカブッルと考えられる酵素等の発現プロファイルを、抗体ライブラリーを用いて作成する。 本年度は、さらに多施設においての検証研究を進めていく。 症例数を多く持つ台北医科大学等と緊密な連携をとり、国際共同研究による検証研究を行っていく。
|