研究課題/領域番号 |
23390471
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森山 啓司 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20262206)
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研究分担者 |
小川 卓也 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (50401360)
東堀 紀尚 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (50585221)
大隈 瑞恵 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (60456209)
小林 起穂 東京医科歯科大学, 硬組織疾患ゲノムセンター, 特任助教 (20596233)
秋吉 一成 京都大学, 工学部, 教授 (90201285)
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キーワード | Apert症候群 / 先天異常 / FGFR2 / 骨芽細胞分化 / 可溶型受容体 |
研究概要 |
Apert症候群はFGFR2の点変異(S252WまたはP253R)によって引き起こされる先天性疾患で、頭蓋冠縫合部の早期癒合症、中顔面部の劣成長、および四肢の合指症を主症状する。本疾患の根本的治療法は確立されていないため、本研究では、Apert症候群の病態成立機構に基づいた新規治療法の開発を目的に、Apert型変異(FGFR2S252W)を含む可溶型FGFR2(sFGFR2S252W)の骨芽細胞の分化に対する作用を検討した。FGFR2S252WおよびsFGFR2S252Wを強制発現させた各トランスジェニックマウス、これら2系統の交配マウス、および野生型マウス頭蓋冠骨芽細胞を単離し(ApOB,sApOB,Ap/sApOB,WtOB)解析を行った。ApOBはWtOBと比較して優位に高い石灰化能を示し、sApOBはより低い分化可能を示した。また、各細胞を免疫不全マウス皮下へ移植し、その石灰化能を検索したところ、ApOBではWtOBと比較して旺盛な骨形成能を示した一方、sApOBでは骨形成が著しく抑制されていた。また各細胞における細胞内情報伝達物資のリン酸化を検索したところ、ApOBはWtOBと比較してMEK,EPK,PLCγ,p-38の各伝達経路における関連タンパク質の高リン酸化が認められた一方、sApOBでは著しい阻害を認めたAp/sApOBではApOBに認められた骨芽細胞分化および骨形成能の亢進、細胞内情報伝達分子の高リン酸化が抑制されており、Wtと同等の結果を示した。以上より、FGFR2S252WはMEK,EPK,PLCg,p-38各経路を活性化することによって骨芽細胞の分化を亢進させ、これに対しsFGFR2S252Wは抑制効果を有する事が分かった。疾患変異を含む可溶型受容体の応用は非常にユニークなアプローチであり、本疾患治療法開発への一助となる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異を含む可溶型FGFR2の骨芽細胞分化抑制について、in vitroにおける詳細な解析を行い、その成果をJournal of Cellular Physiologyに発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまで得られた知見をin ivivoに応用するため、可溶型FGFR2タンパク質を精製し、Apert症候群モデルマウスであるFGFR2^<+/S252W>胎児頭蓋冠器官培養系を用いてその作用を検討する。投与方法としては、生体親和性の高いナノゲルを用いる予定である。投与する精製タンパク質の生理活性の測定および投与至適条件の検討が必要となるため、in vitroでの細胞増殖、細胞内情報伝達経路、細胞分化に対する精製タンパク質の作用についての予備実験を、マウス胎児頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞を用いて検討する。また、タンパク質の精製はCos7細胞を用いた発現系で行うが、native conditionで精製できない場合はdenaturing conditionで精製を行い、タンパク質のrefoldingを行う予定である。
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