研究概要 |
これまでの研究から,口腔細菌は循環器系をはじめ脳血管系および消化器系にも病原性を示す可能性が考えられた.本研究では,血液中に侵入した口腔細菌が各臓器に与える影響を包括的に解明することを目標とした.初年度である今年度は,主要なう蝕原性細菌であるStreptococcus mutansおよび歯周病性細菌であるPorphyromonas gingivalisを用いて,各種動物モデルにおける病原性の評価を行った.S.mutansに関しては,抜歯後菌血症や感染性心内膜炎患者の血液からの分離株と標準的な口腔分離株を用いることとした.また,P.gingivalisにおいては,歯周病原性が強く組織への侵襲性が強いことが知られている株と歯周病性の弱い標準株とを用いることとした.まず,大腿動脈損傷マウスモデルにおける血管内皮肥厚に対する評価では,S.mutans菌株では肥厚は生じなかったが,歯周病性の強いP.gingivalis菌株では病変の悪化が認められた/また,脳出血および腸炎に関しては,S.mutansの血液分離株が病変の悪化を惹起することが明らかになった.P.gingivalis菌株に関しては現在分析中である.また,非アルコール性脂肪肝モデルに関する病原性の検討も継続している.全てのデータが出そろった段階で,各菌種および菌株の及ぼす各種臓器への影響に関して系統享てて解析することで,血液中に侵入した菌が発揮する病原性に関して包括的に解明したいと考えている.さらに,各種疾患患者における口腔検体の分子生物学的解析を進めており,それぞれの疾患において特異的に存在する菌種および菌株の特定も進めている.
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