研究概要 |
本研究では,看護実践知(看護技術・看護過程事例など)を集積・共有し,セレンディピティ(ひらめき)の創出と新たな「知」を創造することのできる“新しい”学習コミュニティシステムを開発し,医療に関わる多様なステークホルダ(看護師・医師・コメディカ ル・患者・家族)の参画の下で,その看護実践知が持続的に精錬・発展するフラットで開かれた学習コミュニティの成長モデル(看護ソーシャルeラーニングモデル)を構築することを目的とする. 本年度は昨年度に引き続き,協力病院でブラッシュアップした複数の看護技術映像を,学習コミュニティシステムに搭載したうえで,異なるステークフォルダー参画のもと,運用評価を実施した.利用者の属性により学習コミュニティシステム内のコミュニケーションおよび学習の成立状況を分析して,システムの利便性,有用性,学習効果(転移)などについて評価を行った.その結果,前回よりも全体のコメント数は減少したが,指摘のコメントより肯定的なコメントが増加し,このプロセスを繰り返すことにより,看護実践知の精錬・発展が収束していくことが示唆された.また,今回は繰り返しのコミュニケーションは見られず,提示からコメントといった一般的なパターンが多く,このコミュニケーションが双方向にみられるようにすると,新たな看護技術方法の開発につながるのではないかと考えられる. 本研究より,看護の実践知を形式的なテキストマニュアルでとどめるのではなく,映像マニュアルとして視覚化して共有することにより,ステークフォルダの目にとまりやすく,的確で有益なコメントも収集しやすくなることが明らかになった.これらすべてをeラーニングシステムで一元管理することにより,徐々ではあるがコンテンツは集積され,改善のプロセスに乗りやすくなる.看護業務のルーチンワークとしてシステムを定着させることが重要であると考える.
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