研究課題/領域番号 |
23390496
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
黒田 裕子 北里大学, 看護学部, 教授 (90234616)
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研究分担者 |
柏木 公一 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (20334378)
山勢 博彰 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90279357)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 看護支援システム / 電子カルテ / システム評価 |
研究概要 |
1年目に実施した国内15医療機関のヒアリング調査分析結果及び関連文献レビューから、本研究者らが考案している看護支援システムの試作システムを既存の電子カルテの画面2種類と、新規に考案した画面1種類を作成した。この試作システムにシミュレーション用の架空事例を複数組み込んで作動させる計画であったが2年目は実施できなかった。また、試作システムの成果研究を実施するために、成果枠組み、成果指標、測定尺度を検討することにしていたが、これも2年目には実施できなかった。 しかしながら、1年目に実施したヒアリング調査分析結果や関連研究レビューから次年度に実施する計画である看護支援システムの評価研究へ向けた有用な資料は得られているので、次年度につなげていく計画である。 海外ヒアリングの成果としては、1)日米のシステム開発プロセスを比較し、米国ではシステム構築のフォーカスがかなり絞り込まれていることが判明した。具体的にはブリガム・ウイメンズ病院では、「誤薬」「転倒転落」等の高頻度の事故を防ぐための機能に重点を置いている一方、日本ではピンポイントの目標は立てず、もう少し幅広いフォーカスが多いことが明確となった。2)米国ではフォーカスが明確なために評価も厳密に行われていることが判明した。具体的には、転倒発生率など臨床的な効果を定量評価していた、加えて利便性などのシステム自体に対する評価も別途行われていた。3)このような日米の違いは、システム開発体制の違いが影響していることが示唆された。即ち、日本ではシステムを担当する看護師は1~2名であるが、米国では臨床の各分野の専門家が、システム構築に多数かかわっていることが特徴であった。以上のような日米の違いは今後本研究において評価指標を構築していく際の1つの参考資料となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
わが国における看護支援システムの評価を最終的な目的として2年目が経過した。まずはわが国における電子カルテ全体の実態をヒアリング調査を通して1年目に実施した。その結果を受けて2年目では試作システムを完成させて、試作システムの評価を実施する計画であったが、試作システムの考案がきわめて困難で時間を要することから、一部は作成できたが未だ完成にはいたっていない。従って、3年目にはできる限り早くこの試作システムの完成と評価を実施し、全国医療機関における看護支援システムを評価するための枠組み、指標、尺度などを整備していく計画である。この遅れを取り戻すことが3年目における大きな目標である。しかし、2年目に行った米国の電子カルテのヒアリング調査では本研究にとって有用な材料が得られたと考える。今後、評価システムを構築していく際の手がかりが得られていることを受けて本研究をいっそう推進させていくうえで有益なヒアリング調査であったと言えるので、3年目には2年目の遅れを取り戻せる可能性が高い。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の段階では、未だ一部しか作成できていない看護支援システムの試作システムを、3年目には完成させる。そのうえで、完成した試作システムに架空事例を複数取り込んで作動させる。これを受けて、この試作システムのシステム評価を予備的に行う。システム評価のための枠組み、指標、尺度も考案し、今後、わが国の医療機関の看護支援システム評価へ向けたパイロット研究ができるようにしていく。そのうえで、わが国の医療機関の看護支援システム評価の大規模調査へ向けた評価システムを構築する。構築にあたっては、1年目、2年目に実施してきた国内外のヒアリング調査結果及び関連研究レビュー結果を基盤としていく計画である。
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