研究課題/領域番号 |
23390521
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
鎌倉 やよい 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (00177560)
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研究分担者 |
百瀬 由美子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (20262735)
藤原 奈佳子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (30178032)
湯 海鵬 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (60227551)
深田 順子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (60238441)
石垣 享 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (60347391)
坂上 貴之 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (90146720)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 高齢者 / 地域 / 予防システム |
研究概要 |
地域高齢者が嚥下障害リスク評価尺度改訂版(以後、リスク評価尺度)を用いてセルフチェックを行い、摂食・嚥下障害のリスク有りと判定される6点以上の者に二次スクリーニングを行うことを目的とし、A市が実施した「健康自立度に関する調査」で摂食嚥下機能に問題があると判断された高齢者2,169名に調査票を送付した。二次スクリーニングには、リスク評価尺度6点以上と自己判定した193名が参加し、問診、リスク評価尺度の確認後、うがいテスト、反復唾液嚥下テスト(RSST)及び30mL水飲みテストが実施された。その結果に基づき、パンフレットを用いた生活指導を実施し、咽頭期の問題が疑われた11名(5.7%)に医療機関受診を勧めた。当該スクリーニング方法について、実施可能性が示唆された。 次に、嚥下体操(以後、ツバメ体操)の安全性を確認するために、高齢者13名(平均年齢66.8±5.7歳、59~77歳、女性10名、男性3名)に対し、運動負荷として血圧・心拍数・ボルグスケールを測定した。ツバメ体操4クールまでは、運動負荷によって増加した心拍数が運動後に運動前値に回復した前年度の成果に基づき、体操時間を5分(4クール)として測定した。体操後の平均増加率は、収縮期血圧4.4%、拡張期血圧3.7%、心拍数14.9%であった。体操終了時にボルグスケールが15に増加した高齢者は1名(63歳女性)であり、運動中の心拍数は体操2クールで48.5%増加率(144回)を示した。運動中の心負荷はボルグスケールの増加で確認できることが示唆された。 ツバメ体操を普及するために、ツバメ体操を撮影して、既に完成した歌と共にDVDを作成し、A市の健康推進員が普及を図ることを企画した。高齢者約200名が参加した健康推進員主催の会において、摂食嚥下機能の維持に関する講義と体操指導を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域高齢者の摂食嚥下障害予防サポートシステムを構築し評価することが目的である。サポートシステムには、(1)摂食・嚥下障害予防の啓発活動の実施、(2)65歳以上の地域高齢者を対象に摂食・嚥下障害リスク評価尺度(以後、リスク評価尺度)を用いて、リスクのある高齢者を一次スクリーニングすること、(3)二次スクリーニングを行い、正常者、要観察者、要VF(嚥下造影)者を選別すること、が含まれる。 現在までに、啓発活動のための嚥下体操(ツバメ体操)を開発した。地域高齢者にリスク評価尺度を配布してセルフチェックを求め、高齢者が自己判定によって二次スクリーニングに申し込み検査を受ける方法は、機能することを確認した。また、二次スクリーニング検査を保健師が行う方法は困難であったが、摂食・嚥下障害看護認定看護師に依頼して実施することが機能することを確認した。 A市から区域によって介入群と対照群を設定することの了解が得られなかったため、この方法でシステム導入の経済効果を測定することは中止したが、今後推計する資料として、二次スクリーニング後のリスク者から登録する了解を得た。 虚弱高齢者の口腔機能を高めることを目的として口腔衛生プログラムを導入し、高齢者の口腔衛生維持の効果及び介助者への教育効果を測定する介入研究を開始した。現在、継続してデータを収集しているところである。 以上から概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の課題は、地域高齢者の摂食嚥下障害予防サポートシステムをA市の事業に導入することである。そのためには、事業に要する費用と人的負担を軽くすることが重要である。嚥下障害リスク評価尺度改訂版(以後、リスク評価尺度)について、年1回広報誌に掲載すること、二次スクリーニングには摂食・嚥下障害看護認定看護師に依頼すること、リスク者を市に登録すること、啓発活動として健康推進員に対して嚥下体操(以後、ツバメ体操)の指導を行い普及すること等、事業化に向けて具体的に市と調整する。同時に、A市の歯科医師会、関連病院とも調整する。 その結果に基づき、リスク評価尺度をA市の高齢者に周知し、二次スクリーニングを実施する。A市全体に周知することとなるため、二次スクリーニングとして、問診、リスク評価尺度の確認後、うがいテスト、反復唾液嚥下テスト(RSST)及び30mL水飲みテストを2013年度と同様に実施し、分析する予定である。 また、啓発活動として、ツバメ体操のポスターを作成し、参加カード、A市のマイスター表彰制度への組み入れを検討するなど、体操を継続する仕組を検討する。A市の健康推進員に対しツバメ体操の講習会を企画し、体操指導と共に、運動負荷を避けるためにボルグスケール13までの運動とするよう指導する。 さらに、虚弱高齢者の口腔機能を高めることを目的として口腔衛生プログラムを導入しデータ集積中であるが、高齢者の口腔衛生維持の効果及び介助者への教育効果を明らかにする。
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