研究課題/領域番号 |
23401001
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
文化財科学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
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研究分担者 |
下田 一太 早稲田大学, 理工学術院, 客員講師(非寓勤扱い) (40386719)
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キーワード | 石造文化財 / アンコール遺跡 / サンボールプレイクック遺跡 / コーケル遺跡 / 石材 / 砂岩 / 石切り場 / 石材運搬経路 |
研究概要 |
アンコール遺跡では主要建築材として灰色~黄褐色砂岩が使用されている。この砂岩は、アンコール遺跡の北東約30kmのところにあるクレン山の麓に露出しており、そこからアンコール時代の石切り場が発見されている。本年度においては、このクレン山の麓において、集中的に砂岩材石切り場の調査を行った。その結果、従来報告されていた石切り場を遥かに上回る数の大小の石切り場を発見することができた。また、その帯磁率から石切り場が開発された時期を判明することができ、時代による石切り場の移動の様子をある程度明らかにすることができたまた、衛星写真かたクレン山とアンコール遺跡を繋ぐ水路跡が見つかり、それを基に現地調査を行った。調査の結果、水路は人工的な運河と自然の河川とを繋いだものであり、運河の幅はおよそ15~20mあり、両側は土手となっており、深いところでは土手の頂部から運河の底まで6m程であった。その全長はおよそ40kmであり、ほぼ最短距離でクレン山とアンコール遺跡を繋いでおり、この水路がアンコール時代において砂岩材の運搬に使用されていたと考えられる。従来は、クレン山から南下し、途中運河を通ってトンレ・サップ湖に至り、そこから西進してシェム・リアップ川を遡り、アンコール遺跡に至る運搬経路が提唱されていたが、この経路は90kmに達し、かつ、川を遡上しなければならないことから、今回発見された水路が砂岩材運搬に使用されていた可能性が極めて高いと考えられる。 この他に、今年度は、携帯型蛍光X線分析装置を用いて、サンボール・プレイ・クック遺跡のレンガ材およびコー・ケル遺跡のラテライト材に対して化学組成分析を行い、レンガおよびラテライト材に基づく建造物の分類を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンコール遺跡に対して、砂岩材の石切り場および運搬経路調査を集中的に実施し、多くの重要な成果を得ることができた。また、サンボール・プレイ・クック遺跡およびコー・ケル遣跡のレンガおよびラテライト材に対して携帯型蛍光X線分析装置を用いて化学組成分析を行い、その結果に基づき建造物の分類をある程度行うことができた。しかしながら、東南アジアの他の国の石造文化財の調査を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
アンコール遺跡の砂岩材石切り場に関して多くの情報を得ることができたが、アンコール・ワットを建造するための大規模な石切りが発見されていないことから、まだ多くの未発見の石切り場が存在することが推測されるので、来年度も石切り場の調査を集中的に行う予定である。これに加え、カンボジア国内の他の遺跡の石切り場や隣国であるタイのクメール期の石切り場に関しても調査を実施することを計画している。また、携帯型蛍光X線分析装置による建築材の調査も遺跡建造に関する情報を得る上で重要であることから、次年度も同様な調査を実施する。
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