研究課題
半乾燥地域において、地下水は重要な水資源の一つであるが、その涵養、流動、流出という一連の循環過程は、気候、地質、地形、植生等の地域条件による多様性が極めて顕著であるため、不明な点がまだ多い。とくに、地下水と地表水の関係をフィールドにおいて実証的に解明した研究例は多くない。本研究では、地下水-地表水を一体の水循環系として位置づけ、安定同位体、無機溶存成分等のマルチトレーサーを用いた解析により、チュニジア北部および中国西部の内陸流域および沿岸流域を対象とし、地表水-地下水循環系の解明を行うとともに、地下水涵養に果たす貯水池起源水成分および塩水起源水成分の寄与率を検討した。中国西部の内陸流域においては、山地から平野への地形的境界域において、地表水から地下水への局地的な涵養が生じていることが示された。また流域下流部の貯水池において、地下水涵養が顕著であることが示された。チュニジア北部の内陸および沿岸流域では、浅層地下水涵養に占める貯水池の役割が25%から50%と推定された。これを量的に評価すると、最大で1500 mm/日に相当した。涵養が生じている場所が、貯水池の近傍やそこから流出した水流近傍に限られるとしても、当地域の年平均降水量が400 mm ~ 600 mmであることを考慮すると、地表水から地下水への涵養はきわめて重要な役割を果たしていると言える。さらにチュニジア北部の沿岸地域では、上流側に貯水池がある流域とない流域において地下水の塩水化の程度を比較した。その結果貯水池のある流域において、地下水中の塩素イオン濃度が顕著に低く、また地下水に占める貯水池起源水の影響が高いことが示された。このことから、貯水池が地下水への海水の影響を制御する効果があることが示された。本研究により、半乾燥域の地下水において地表水の果たす量的・質的効果が、重要であることが実証的に示された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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